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相続土地国庫帰属制度の負担金はいくらか — 農地の計算式・計算機・「10年後」の意味

最終更新: 2026-08-21

相続土地国庫帰属制度で田んぼや畑を国に引き取ってもらうとき、 いちばん気になるのは「結局いくらかかるのか」です。答えは 審査手数料14,000円/筆 + 負担金(原則20万円/筆、農地は面積算定になると数十万〜数百万円)。 この記事は、政令に定められた算定式をそのまま使って 自分の農地の負担金を計算できることに絞って整理します。 制度の要件・使えないケースは 相続土地国庫帰属制度は農地で使えるか、 要件ごとの詳細は使えない土地の10要件をご覧ください。

費用の全体像 — 法定の2つと、任意の準備費

費目金額いつ備考
審査手数料 14,000円 × 筆数 申請時(収入印紙) 却下・不承認・取下げでも返還されない
負担金 原則20万円/筆
(農地は面積算定になる場合あり。下表)
承認通知から30日以内 納付した時点で所有権が国に移る。期限を過ぎると承認失効
準備費(任意・ケース次第) 数万円〜 申請前 境界の確認・測量、建物や工作物の撤去、雑木の伐採、登記事項証明書等の取得、専門家(弁護士・司法書士・行政書士)への書類作成依頼

申請自体は相続人本人ができ、専門家への依頼は任意です。費用で効くのは圧倒的に 負担金なので、以下はその算定方法です。

負担金は原則20万円 — 農地が「面積算定」になる3つの条件

負担金は1筆ごとに算定され、原則は20万円です(施行令5条1項4号)。 ただし、主に農地として利用されている土地のうち次のいずれかに当たるものは、 面積に応じた算定になります(同項2号)。

  1. 市街化区域内(区域区分のない都市計画区域では用途地域内)
  2. 農用地区域(農業振興地域内の、いわゆる青地)内
  3. 土地改良事業(またはこれに準ずる事業)が施行される区域内

逆に言えば、市街化区域の外で、青地でもなく、土地改良事業の区域でもない農地なら 20万円です。1と2は当サイトの地図で筆単位の見当を付けられます (区域区分は都市計画データ、農用地区域は参考データで、確定には市町村への照会が必要)。 3は全国的な公開データがないため、土地改良区または市町村に照会してください。

算定式(政令別表)と計算例

面積算定の田・畑は、地積(㎡)の区分ごとに「地積 × 単価 + 定額」で計算し、 1,000円未満を切り捨てます(施行令5条)。

地積算定式
250㎡以下地積 × 1,210円 + 208,000円2a(200㎡) → 450,000円
250㎡超〜500㎡地積 × 850円 + 298,000円3a(300㎡) → 553,000円
500㎡超〜1,000㎡地積 × 810円 + 318,000円10a(1,000㎡) → 1,128,000円
1,000㎡超〜2,000㎡地積 × 740円 + 388,000円15a(1,500㎡) → 1,498,000円
2,000㎡超〜4,000㎡地積 × 650円 + 568,000円30a(3,000㎡) → 2,518,000円
4,000㎡超地積 × 640円 + 608,000円1ha(10,000㎡) → 7,008,000円

田んぼ1枚の標準的な広さである10a(1反)で約113万円、 1haなら約700万円です。原則の20万円とは桁が違うので、 自分の農地が3条件に当たるかどうかが最初の分かれ目になります。

負担金の計算機(田畑・宅地・森林)

政令の算定式で負担金を計算します。面積算定に当たらない場合は20万円です。 隣接する同じ区分の筆を合算する場合は、合計の地積を入力してください (合算の条件は次の節)。

1a = 100㎡、1反(10a) = 1,000㎡、1町(1ha) = 10,000㎡。 1,000円未満は切り捨て。審査手数料(14,000円 × 筆数)も合算して表示します。 実際の金額は法務局の通知で確定します。

隣接する筆は合算できる — 負担金を下げる唯一の正攻法

隣接する2筆以上の土地が同じ区分(たとえば、いずれも面積算定の田畑)なら、 1筆とみなして負担金を算定するよう法務大臣に申し出ることができます(施行令6条)。 所有者が異なるときは共同で申し出ます。

ケース個別に算定合算して算定差額
農用地区域内の隣接する田 5a × 2筆 723,000円 × 2 = 1,446,000円 10aとして 1,128,000円 318,000円安い
同 10a × 3筆 1,128,000円 × 3 = 3,384,000円 30aとして 2,518,000円 866,000円安い
原則20万円の畑 × 2筆(隣接) 200,000円 × 2 200,000円 200,000円安い

相続した田が数筆並んでいる場合は、隣接関係を 地図で確認してみてください。筆ごとの区画形状と推定地番の表示が目安になります (確定は公図・登記事項証明書で)。

「10年分」の意味 — 10年後に何かが起きるわけではない

負担金は「国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を 考慮して」算定すると法律に書かれています(相続土地国庫帰属法10条1項)。 これは金額を決めるときの考え方であって、

のいずれでもありません。負担金を納付した時点で所有権は国に移り(同法11条)、 以後の管理は国(農地は農林水産大臣)が行います。承認が取り消されうるのは、 要件に当たる事実を知りながら告げずに承認を受けたなど不正の手段があった場合に限られます (同法13条・14条)。

納付期限と流れ — 30日を過ぎると承認が失効する

  1. 法務局(本局)に事前相談 → 申請書と添付書類を提出、審査手数料を収入印紙で納付
  2. 書面審査・実地調査(標準処理期間は8か月の目安)
  3. 承認の通知と同時に負担金額の通知
  4. 通知を受けた日から30日以内に納付。期限内に納付しないと 承認は効力を失います(10条3項)
  5. 納付の時に所有権が国庫に帰属(11条)

負担金の額は承認の段階で初めて正式に分かります。だからこそ、申請前に「20万円で済むのか、 面積算定で100万円を超えるのか」を見積もっておくことが重要です。 払えない金額だと分かった時点で、手数料だけが消えてしまいます。

実績から見る相場感(令和8年7月31日現在)

負担金を見積もってみて高いと感じたら、同じ取下げ件数が示すとおり、 検討の途中で貸す相手や買い手が見つかるケースが相当数あります。 負担金100万円を払うか、農地バンクに貸すか、 持ち続けるコストを数字で比べるか—— 次の節で並べます。

負担金 vs 持ち続けるコスト vs 他の出口

選択肢かかるお金の目安注意点
国庫帰属 手数料14,000円/筆 + 負担金(20万円 or 面積算定) 要件に当たると使えない。貸している農地は申請不可
持ち続ける 固定資産税(一般農地は10aあたり年千円程度が目安)+ 草刈り等の管理 → 農地の固定資産税はいくらか 安いが、管理の手間と相続のたびの手続きが続く。勧告を受けた遊休農地は税額が約1.8倍
農地バンクに貸す 原則かからない(賃料を受け取る側)→ 農地バンクに貸すには 借り手がいる地域でないと成立しない。貸している間は国庫帰属に出せない
売る 測量・仲介等の実費 → 農地を売りたい 買い手は原則農家。立地次第で売れない農地がある

どれが現実的かは農地の条件で決まります。 農地の出口チェック(無料・5問)で条件から整理できます。

よくある質問

相続土地国庫帰属制度の費用は全部でいくらですか?

法定の費用は、審査手数料(土地1筆あたり14,000円・収入印紙)と、承認後に納める負担金(原則1筆20万円。市街化区域・農用地区域・土地改良事業の区域内の農地は面積に応じた額で、10aなら1,128,000円)の2つです。このほか任意で、境界の確認や測量、建物・工作物の撤去、専門家への書類作成依頼の費用がかかることがあります。

負担金の「10年分」は10年後にどうなりますか?

負担金は「国有地の種目ごとに管理に要する10年分の標準的な費用を考慮して」算定される一度きりの金額です(相続土地国庫帰属法10条1項)。10年後に土地が戻ってきたり、追加の管理費を請求されたりする仕組みではありません。納付した時点で所有権は国に移ります。

負担金はいつまでに払いますか? 払えないとどうなりますか?

承認と負担金額の通知を受けた日から30日以内に納付します。期限内に納付しないと承認は効力を失います(同法10条3項)。手数料は戻りません。

農地の負担金を安くする方法はありますか?

隣接する2筆以上の土地が同じ区分(いずれも面積算定の田畑など)なら、1筆とみなして負担金を算定するよう申し出ることができます(施行令6条)。たとえば農用地区域内の隣接する5aの田2筆は、個別だと723,000円×2=1,446,000円ですが、合算して10aとして算定すると1,128,000円になります。所有者が異なる場合は共同で申し出ます。

審査手数料や負担金は、却下・不承認でも返ってきますか?

審査手数料(14,000円/筆)は、却下・不承認・取下げのいずれでも返還されません。負担金は承認後に納めるものなので、却下・不承認の場合はそもそも発生しません。

申請から国庫帰属までどれくらいかかりますか?

法務局は標準処理期間を8か月と案内しています(申請から国庫帰属までの目安。補正にかかる期間は含まず、内容により超えることがあります)。

まず「区域」を見る — 20万円か、面積算定か

農地を探す(地図・検索)で市町村名から対象の区画を表示し、 スコアカードの区域区分と農用地区域の欄を確認してください。面積算定の可能性があれば、 上の計算機に地積(登記事項証明書の地積、または区画の面積)を入れて見積もります。

出典: 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)10条・11条・13条・14条、 同法施行令(令和4年政令第316号)3条・5条・6条(算定式・合算の特例)、 法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」 「相続土地国庫帰属制度の統計」(令和8年7月31日現在)、 各法務局の標準処理期間の案内(いずれも2026年8月21日閲覧)。 負担金の額は法務局の通知で確定します。当サイトは国庫帰属の可否や負担金額を判定するものではなく、 区域表示は公的オープンデータによる参考情報です(農用地区域は内容年次が古いため市町村への照会が必要)。

本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の手続きは必ず市町村の農業委員会等の窓口でご確認ください。