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農地バンクに貸すには — 出し手の手順・賃料・デメリットと「借り手がいる地域か」の確かめ方

最終更新: 2026-08-21

相続した農地を自分では耕作しない、でも手放すほどではない——そのとき最初に出てくるのが 農地バンク(農地中間管理機構)に貸す選択肢です。 制度の説明は各県の機構のサイトにありますが、所有者が本当に知りたいのは 「うちの地域で借り手が付くのか」「貸すと何が起きて、何ができなくなるのか」でしょう。 この記事はその2点に重心を置きます。借りる側の手順は 利用権設定と農地バンクの使い方にあります。

仕組み(出し手から見た3行)

メリット — 出し手にとって

メリット内容
確実に返ってくる 貸付期間終了後に必ず返却される(個人間の貸借で問題になりやすい離作料・返還トラブルを避けられる)
賃料は機構経由で確実 受け手が複数でも、賃料は機構から振り込まれる。滞納リスクを個人で負わない
税の軽減 2026年4月1日以降、地域計画ごとに所有農地の全部を同一年に貸し付けた場合、10年以上の貸付農地の 固定資産税が3年間1/2。促進計画による譲渡の譲渡所得控除(800万円/1,500万円)もある
管理から解放される 草刈り・水管理・近隣対応は受け手が行う。遊休農地の勧告(税額約1.8倍)の心配もなくなる

デメリット・注意点 — ここを先に知っておく

  1. 借り手がいなければ成立しない — 機構は「借りて貸す」仕組みなので、地域計画外の農地や営農条件の悪い農地、そもそも受け手がいない地域では 借り受けてもらえないことがあります(農林水産省FAQ)。最大の分かれ目は農地そのものより地域です(次節)
  2. 期間は長め — 受け手の経営安定のため「できるだけ長く」が求められ、10年以上を提案されることがあります。 期間中は自分で使えず、売却も借り手付きの条件になります
  3. 賃料は高くならない — 出し手・受け手・機構の三者協議で地域相場に沿って決まります。地域によっては低額です
  4. 貸している間は国庫帰属に出せない — 賃借権・利用権は「使用収益を目的とする権利」に当たり、 相続土地国庫帰属制度の却下要件です。 将来手放す可能性があるなら、順番を考えておく必要があります
  5. 固定資産税は続く — 所有者は変わらないので納税義務は残ります(賃料と軽減措置で相殺できるか → 農地の固定資産税はいくらか)

借り手がいる地域か — 申し込む前に集落単位で確かめる

借り手が付くかどうかは、地域の農業の構造でほぼ決まります。当サイトでは、農林業センサスと 集落営農実態調査・地域計画(いずれも農林水産省)から、農業集落ごとに 「農地の借り手がいる地域か」を3段階で表示しています。見ているのは次の3点です。

使い方: 農地を探すで市町村名から区画を表示し、スコアカードの 「農地の借り手がいる地域か」ブロックを見るか、地図の色分けを同名のモードに切り替えると、 集落ごとの傾向が一目で分かります。借り手がいる傾向が高め・中程度の区画だけ に絞って表示することもできます。 「低め」の地域は、機構に相談しても受け手が見つからない可能性を織り込んで、 売る・手放すルートも並行して検討するのが現実的です。

※ 集落統計は秘匿や年次の制約があり、区画ごとの貸借の可否を示すものではありません。 借り手の有無は最終的に市町村・農業委員会・農地バンクの調整で決まります。

申し込みの手順

  1. 市町村の農政担当課または農業委員会に「貸したい」と伝える — 地域計画の話し合いに乗せてもらう。各県の機構の連絡先は 都道府県ページの相談先に掲載しています
  2. 農地の情報を渡す — 所在・地番・面積、現況(耕作中/休耕/荒れている)、水利、進入路
  3. 受け手の調整 — 地域計画に位置付けられた担い手とのマッチング。賃料・期間を三者で協議
  4. 促進計画の公告で貸借成立 — 農地法3条の許可は不要。賃料は機構から振込
  5. 期間満了で返却 — 継続したければ再度貸付

相続直後で名義変更(相続登記)が済んでいない場合は、先に相続人を確定しておく必要があります。 期限やほかの選択肢は農業をしない人の農地相続 — 6つの選択肢と期限へ。

貸す以外と比べる

農地バンクに貸す売る国庫帰属
所有権 残る(返ってくる) 手放す 手放す
お金 賃料を受け取る。税軽減あり 代金を受け取る(立地次第) 払う(手数料+負担金)
成立の条件 地域に借り手がいる 買い手(原則農家)がいる・立地 要件に当たらない・負担金を払える
詳しく この記事 農地を売りたい 国庫帰属は農地で使えるか

あなたの農地の条件でどれが現実的かは 農地の出口チェック(無料・5問)で整理できます。

よくある質問

農地バンクとは何ですか?

農地中間管理機構の通称で、都道府県ごとに1つ設置された公的機関です。農地を貸したい人から機構が借り受け、地域計画に基づいて担い手(認定農業者・農業法人・集落営農など)に貸し付けます。契約・賃料の受け渡しは機構を介して行われ、期間満了後は必ず所有者に返却されます。

農地バンクに貸すデメリットはありますか?

主に4つです。(1)借り手がいない地域・営農条件の悪い農地・地域計画外の農地は借り受けてもらえないことがある、(2)受け手の経営安定のため貸付期間は長め(10年以上を求められることがある)で、期間中は自分で使えず売却もしにくい、(3)賃料は出し手・受け手・機構の三者協議で地域相場に沿うため高額にはなりにくい、(4)貸している間は使用収益権が設定されているため相続土地国庫帰属制度に申請できない、です。

賃料はいくらくらいですか?

出し手・受け手・農地バンクの三者が協議して決めます(農林水産省)。地域の相場で決まり、納入時期や支払方法は各農地バンクで異なります。賃料の水準は地域の借り手の多さで大きく変わるので、まず地域の状況を確認するのが先です。

荒れた田んぼでも借りてもらえますか?

地域計画で耕作する者が位置付けられる場合は、草刈り等の簡易な整備を行ったうえで借り受けて貸し付けることができます。ただし地域計画外の農地や営農条件が悪い農地は借り受けられないことがあります(農林水産省)。

農地バンクに貸すと税金は安くなりますか?

2026年4月1日以降、地域計画ごとに所有する農地の全部を同一年に農地バンクに貸し付けた人について、10年以上の期間で貸し付けた農地の固定資産税が3年間2分の1になる軽減措置があります。また促進計画により農用地区域内の農地を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除(800万円、機構との買入協議による譲渡は1,500万円)もあります。適用条件は市町村・農地バンクに確認してください。

どこに申し込めばいいですか?

市町村の農政担当課、農業委員会、または都道府県の農地バンクの相談窓口です。2025年度からは地域計画(目標地図)に基づく貸借に一本化されているため、まず市町村・農業委員会に「貸したい」と伝え、地域計画の話し合いに乗せてもらうのが近道です。

出典: 農林水産省「農地バンクに関するよくある質問」 (Q5 メリット・Q6 遊休農地・Q9 賃料・Q10 貸付期間・Q18 税制)、 農林水産省「農地中間管理機構一覧」(2026年8月21日閲覧)。 「農地の借り手がいる地域か」は農林水産省統計部「地域の農業を見て・知って・活かすDB(2025年農林業センサス、地域計画、 令和3年集落営農実態調査)」を加工して作成した参考指標で、貸借の可否を示すものではありません。

本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の手続きは必ず市町村の農業委員会等の窓口でご確認ください。