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農地売却の方法 — 4つの売り方・相場の調べ方・売りにくい農地の見分け方

最終更新: 2026-08-24

使わなくなった田んぼや畑を売りたい——そう考えたときに最初に知っておきたいのは、 農地は「誰にでも売れる土地」ではないということです。 農地の売買には農地法の許可が必要で、農地のまま売る場合、買い手は農業者に限られます。 宅地のように不動産会社に頼めば売れる、とはならないケースが多くあります。

ただし出口が無いわけではありません。売り方は大きく4つあり、 どれが現実的かは農地の立地でほぼ決まります。 このページでは4つの選び方と、あわせて 売りにくい農地の条件も正直に整理します。

→ 農地の出口チェック(無料・5問)— 自分の条件でどの出口が現実的かを先に整理する

売り方は4つ — 比較表

出口向いているケース主な窓口
① 農地のまま売る
(農地法3条)
近隣に耕作を広げたい農家・農業法人がいる 農業委員会
② 転用して売る
(農地法4条・5条)
市街化区域など、宅地等への転用が見込める立地 農業委員会 + 不動産会社
③ 農地バンクに預ける 売り先が見つからない・荒らしたくない
(売却ではなく貸付)
都道府県の農地中間管理機構
④ 国に引き取ってもらう 買い手も借り手も見込めない
(収入ではなく費用が発生)
法務局(相続土地国庫帰属制度)

③と④は厳密には「売る」ではありませんが、 手放したい・管理から解放されたいという目的で見ると同じ列に並ぶ選択肢です。 ①②が難しい農地ほど、③④が現実的な出口になります。

① 農地のまま、農業者に売る(農地法3条)

農地を農地のまま売買するには、農業委員会の 農地法3条許可が必要です。 買い手には「取得後に農地のすべてを効率的に利用すること」「農作業に常時従事すること」 「周辺の農地利用に支障を生じないこと」といった要件があり、 実質的に買い手は農業者・農業法人に限られます

そのため、この経路で最初にやることは価格交渉ではなく 「地域に受け手がいるか」の確認です。農業委員会は地域の意向を把握しており、 近隣で規模拡大を進めている農家に心当たりがあることも少なくありません。

なお、農用地区域(青地)であっても、農地として売る分には農振除外は不要です。 除外の手続きが必要になるのは次の②(転用)の場合だけで、ここは誤解の多いところです。

② 転用して売る(農地法4条・5条) — 立地でほぼ決まる

宅地・駐車場・資材置場などにして売る場合は、農地転用の手続きが必要です (自分で転用してから売るなら4条、買い手が転用する前提で売るなら5条)。 農業者以外にも売れるようになるため選択肢は大きく広がりますが、 できるかどうかは立地で決まります

立地転用の扱い
市街化区域 農業委員会への届出が中心で、比較的進めやすい立地です。 ただし生産緑地地区の指定があると届出だけでは済みません
市街化調整区域 農地転用の許可に加え、建築等を伴う場合は 都市計画法の開発許可の要否も関わります
農用地区域(青地) 転用の前に農用地区域からの除外(農振除外)が必要です。 申出の受付時期が限られており、年単位かかることがあります
非線引き・都市計画区域外 転用は許可制です。立地の扱い(農地区分)は個別性が高く、 農業委員会への照会が近道です

③ 農地バンクに預ける — 売却ではないが現実的な受け皿

都道府県ごとの農地中間管理機構(農地バンク)は、 貸したい人と借りたい人をつなぐ公的な仕組みです。無料で相談できます。 売却ではなく貸付(利用権設定)が中心のため所有権は残りますが、 耕作が続けば農地が荒れず、固定資産税を払っても収支が立ちやすくなります。 使い方は利用権設定と農地バンクの使い方にまとめています。

「売りたいが買い手がいない」段階で、そのまま放置してしまうより先に相談する価値があります。

④ 国に引き取ってもらう — 相続土地国庫帰属制度

2023年に始まった制度で、審査手数料(1筆14,000円)と負担金(原則20万円/筆)を 支払って国に引き取ってもらいます。収入は得られませんが、 買い手も借り手も見込めない農地では現実的な出口になります。 ただし使えない土地の要件があり、市街化区域・農用地区域などでは負担金が面積に比例して 上がる条件に当たります。詳しくは 相続土地国庫帰属制度は農地で使えるかにまとめました。

売りにくい農地の条件 — 先に知っておく

どの経路でも共通して買い手・借り手が付きにくくなる条件があります。 当てはまる場合は、早い段階で③④を含めて検討したほうが結果的に負担が軽くなります。

これらは「売れない」という意味ではありません。 時間がかかる前提で動き出す必要がある、という意味です。

農地が売れない・買取を断られたときの出口

不動産会社や買取業者に「農地は扱えない」と断られるのは珍しいことではありません。 宅地と違い、農地は買い手が農業者に限られるか、転用できる立地でないと業者が扱えないためです。 断られた理由ごとに、次に当たる先が変わります。

売れない・断られた理由次に当たる出口
「農地のままでは扱えない」と言われた 農業委員会に3条の受け手(規模拡大を進める農家・農業法人)のあっせんを相談する。隣接する耕作者への直接の打診も現実的です
農用地区域(青地)で転用できない 農地のまま売る・貸す出口に切り替える(青地でも農振除外は不要)。受け手が見つからなければ農地バンク(③)
市街化調整区域で買い手が付かない 調整区域でも農業用倉庫・資材置場など限られた用途は許可の対象になり得ます。用途を絞って農業委員会・開発担当に見通しを聞く
道路に接していない・面積が小さい 耕作者側の受け手を探す(隣接農家・農地バンク)。相続した農地なら国庫帰属(④)の対象になるかを法務局で事前相談する
荒れていて誰も引き取らない 草刈り等の原状回復をしてから農地バンク・農業委員会に再相談する。放置すると遊休農地として利用意向調査の対象になり、固定資産税の課税強化(1.8倍)の対象になることがあります

「売れない」の多くは出口の選び間違いで、農地に合った出口に当て直すと動き出します。 どの出口が合うかは農地の出口チェックで条件から整理できます。

農地買取業者・不動産会社の見分け方

転用できる立地であれば、農地を専門に扱う買取業者・不動産会社は選択肢になります。 依頼する前に確認したい点は4つです。

1社に決めず、農業委員会に地域の実勢を聞いたうえで複数に相談してください。 ジオ農地の市区町村別の農地転用ページには、地域の対応事業者(掲載枠・PR)が表示されることがあります。 掲載は広告であり当サービスによる推奨ではないため、上の4点は掲載事業者にも同じように確認してください。

「いくらで売れる?」に公的データが答えられない理由

農地の売却で最初に知りたいのは価格だと思いますが、 農地には公的な相場データが存在しません。 地価公示・都道府県地価調査は、田・畑に標準地を設定していないためです (当サイトが表示する参考地価も、近くにある別の地目の地点の価格であり、 農地の価格ではありません)。

さらに農地の価格は、「農地として買う人」と「転用して使う人」でまったく違います。 同じ広さでも、市街化区域で宅地にできる農地と、調整区域の青地とでは桁が変わります。 つまり価格を知るには、先に②が可能な立地かどうかを確かめる必要があります。

そのうえで、地域の実勢は農業委員会が把握しています。 農業委員会と、貸付なら都道府県の農地中間管理機構が最初の相談先です。 売却で利益が出た場合の税金には農地向けの特例(800万円控除)があります。 売り方でいくら変わるかは農地を売ったときの税金はいくらか(計算機)で確認し、 個別には税務署・税理士にご確認ください。

最初にやること — 自分の農地の立地を確認する

ここまでのとおり、選べる出口は市街化区域かどうか・農用地区域(青地)の可能性が あるか・車道に接しているかの3点でほぼ絞り込めます。 当サイトでは、この情報を農地1筆ごとに無料で確認できます (農地を探す(地図・検索)で市町村名から表示し、 区画をクリックするとスコアカードに表示されます)。

参考情報であり確定には市町村への照会が必要ですが、 「自分の農地はどのパターンか」の見当を付けてから窓口に行くと、相談が一度で済みやすくなります。 市町村ごとの区域の内訳は市町村別の農地ページで公開しています。

→ 農地の出口チェック(無料・5問)で、自分の条件に合う出口と最初の一歩を整理する

相続をきっかけに検討している場合は、期限のある手続き(相続登記3年・農業委員会への届出10か月) が並行して進みます。全体像は 農業をしない人の農地相続 — 6つの選択肢と期限 をご覧ください。

よくある質問

農地は農家以外の人に売れますか?

農地のまま売る場合、買い手は農地法3条の許可を受けられる農業者・農業法人に限られます。農家以外に売るには、宅地などに転用したうえで売る(農地法5条)必要があり、それが可能かどうかは市街化区域かどうか・農用地区域(青地)かどうかといった立地でほぼ決まります。

農地買取業者に買い取ってもらえますか?

転用できる立地(市街化区域など)であれば、不動産会社や買取業者が扱えることがあります。一方、農地のままでしか売れない立地では買い手が農業者に限られるため、業者が扱えないことも少なくありません。依頼する前に、自分の農地が転用しやすい立地かどうかを確認しておくと話が早く進みます。

農用地区域(青地)の農地は売れますか?

農地として農業者に売ることはできます。この場合、農用地区域からの除外(農振除外)の手続きは必要ありません。除外が必要になるのは転用して売る場合で、申出の受付時期が限られており年単位かかることがあります。

農地はいくらで売れますか?

公的な相場データはありません。地価公示・都道府県地価調査には田・畑の標準地が設定されていないためです。また農地の価格は「農地として買う人」と「転用して使う人」でまったく異なります。地域の実勢は農業委員会が把握しているため、まず農業委員会に相談するのが確実です。

農地が売れない・買取業者に断られた。どうすればいいですか?

断られた理由で次の出口が変わります。「農地のままでは扱えない」なら農業委員会に農業者への3条のあっせんを相談する、青地で転用できないなら農地のまま売る・貸す出口に切り替える(青地でも農振除外は不要)、受け手が見つからなければ農地バンク、相続した農地で誰も引き取らないなら相続土地国庫帰属制度の事前相談、が主な当て直し先です。

使っていない農地を売りたい。まず何をすればいいですか?

先に農地の立地を確認してください。市街化区域か市街化調整区域か、農用地区域(青地)の可能性があるか、車道に接しているか。この3点で選べる売り方が変わるため、確認してから農業委員会に相談すると一度の相談で話が進みます。

本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の手続きは必ず市町村の農業委員会等の窓口でご確認ください。