農地を売ったときの税金はいくらか — 800万円控除の条件と計算機
最終更新: 2026-08-26
農地を売って利益が出ると、他の土地と同じく譲渡所得税がかかります。 ただし農地には、売る相手と経路によって800万円(場合により1,500万円)を差し引ける特例があり、 これを使えるかどうかで税金が0円になるか100万円近くになるかが分かれます。 この記事は「いくらになるか」を自分で計算できることに絞ります。 売り方そのものは農地を売りたい — 4つの売り方をご覧ください。
計算式 — 譲渡所得 × 税率
税金は次の2段で決まります。
- 譲渡所得 = 売却額 − 取得費 − 譲渡費用 − 特別控除
- 税額 = 譲渡所得 × 税率(長期 20.315% / 短期 39.63%)
| 用語 | 意味 | 農地でよくある扱い |
|---|---|---|
| 取得費 | 買ったときの代金・登記費用など | 相続農地は被相続人の取得費を引き継ぐ。不明なら売却額の5%(概算取得費) |
| 譲渡費用 | 売るために直接かかった費用 | 測量費・仲介手数料・印紙代など。草刈りなど維持費は含まない |
| 長期/短期 | 売った年の1月1日時点で所有5年超なら長期 | 相続農地は被相続人の取得日を引き継ぐため、ほとんど長期 |
| 税率(長期) | 所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5% | 合計 20.315% |
| 税率(短期) | 所得税30% + 復興特別所得税0.63% + 住民税9% | 合計 39.63% |
800万円控除 — 使えるのは「農業の担い手に売る」経路だけ
租税特別措置法34条の3の特別控除で、次のような譲渡が対象です。
- 農業委員会のあっせんにより農業者に売る
- 農地中間管理機構(農地バンク)に売る
- 農用地利用集積等促進計画(農業経営基盤強化促進法)により売る
ポイントは、農地法3条の許可で農業者に直接売るだけでは対象にならないこと、 そして転用目的(5条)の売却は対象外であることです。 さらに、農用地区域(青地)内の農地を農業経営基盤強化促進法の買入協議で 農地中間管理機構に売った場合は1,500万円の控除になります(措置法34条の2)。
つまり売却額が数百万円の地方の農地は、経路を選べば税金が0円になることが珍しくありません。 売る前に農業委員会で「この売り方は控除の対象か」を確認してから進めるのが順序です。
計算機 — 条件を入れて税額を出す
上の計算式そのままです。取得費が分からなければ「不明(5%)」のままで構いません。 どの控除が使えるかは売る経路で決まるため、対象になりそうな経路を選んで比べてください。
計算例 — 相続した田を500万円で売る
| 売り方 | 譲渡所得 | 税額(長期) |
|---|---|---|
| 転用目的で業者に売る(控除なし) | 500万 − 25万(5%) = 475万円 | 約96万円 |
| 農地バンクに売る(800万円控除) | 475万 − 800万 → 0円 | 0円(申告は必要) |
同じ500万円でも、経路で約96万円の差が出ます。 ただし転用して売れる農地の方が売却額そのものが高いことが多いので、 「控除が使える経路」と「高く売れる経路」は別々に比べる必要があります。 どちらの経路が立地から現実的かは 農地の出口チェックで整理できます。
相続した農地を売るときの追加ポイント
- 取得費加算の特例 — 相続税を納めた人が、相続開始から3年10か月以内に売ると、 納めた相続税のうちその農地に対応する額を取得費に加算できます。
- 相続登記 — 名義が被相続人のままでは売れません。 相続登記は2024年4月から義務化されています(農地の相続)。
- 納税猶予を受けている農地 — 相続税の納税猶予中の農地を売ると猶予が打ち切られ、 猶予税額と利子税の納付が必要になります。売る前に税務署に確認してください。
よくある質問
農地を売却するときの800万円控除とは?
農業委員会のあっせん、農地中間管理機構(農地バンク)への譲渡、農用地利用集積等促進計画による譲渡など、農地を農業の担い手に集める目的で売った場合に、譲渡所得から800万円を差し引ける特例です(租税特別措置法34条の3)。転用目的で宅地業者などに売る通常の売却(農地法5条)には使えません。
農地を500万円で売却したら税金はいくらですか?
取得費が分からない相続農地を、所有期間5年超(相続なら被相続人の所有期間を引き継ぐ)で、特例を使わずに500万円で売った場合、譲渡所得は500万円−概算取得費25万円−譲渡費用で約475万円、税率20.315%で所得税・住民税あわせて約96万円です。農地バンクへの譲渡などで800万円控除が使えれば譲渡所得は0になり税金はかかりません。上の計算機で条件を変えて確認できます。
相続した農地を売った時の税金はいくらですか?
相続で取得した農地は、被相続人が買った日と取得費を引き継ぎます。何十年も前から所有していた農地なら長期譲渡(税率20.315%)になり、取得費が不明なら売却額の5%を取得費とします。相続税を納めた人が相続開始から3年10か月以内に売る場合は、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例(取得費加算)もあります。
農地を売却したら800万円控除は受けられますか?
売る相手と経路で決まります。農地バンク(農地中間管理機構)に売る、農業委員会のあっせんで農業者に売る、農用地利用集積等促進計画で売る、のいずれかなら対象です。農業者に直接3条許可で売るだけでは対象にならないので、売る前に農業委員会に「800万円控除の対象になる経路か」を確認してください。
農地の売却で税金がかからないケースはありますか?
譲渡所得(売却額−取得費−譲渡費用)が特別控除の範囲に収まる場合です。農地バンク等への譲渡で800万円、農用地区域内の農地を買入協議で農地中間管理機構に売った場合は1,500万円の控除があり、地方の農地の売却額はこの範囲に収まることが多いです。ただし控除を使う場合も確定申告は必要です。
出典: 租税特別措置法31条・32条(長期・短期譲渡所得の税率)、34条の2(1,500万円控除)、34条の3(800万円控除)、 39条(相続財産を譲渡した場合の取得費加算)、国税庁タックスアンサー No.3223「譲渡所得の特別控除の種類」・ No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(いずれも2026年8月26日閲覧)。 本ページは一般的な計算方法の解説であり、個別の税額は税務署・税理士にご確認ください。 区域・地目などの表示は公的オープンデータを加工して作成した参考情報であり、 実際の筆界・権利関係・最新状況を示すものではありません。
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の手続きは必ず市町村の農業委員会等の窓口でご確認ください。