農地の固定資産税はいくらか — 目安・計算機・持ち続けるコストの出し方
最終更新: 2026-08-21
相続した田んぼや畑を「とりあえず持っておく」と決めるなら、毎年いくらかかるのかを 先に数字にしておく必要があります。結論から言うと、 市街化区域の外にある一般農地なら10a(1反)あたり年「千円」規模で、 宅地と比べれば桁違いに安い一方、市街化区域の農地は数万〜十数万円に跳ね上がります。 この記事では、税額の仕組み、納税通知書のどこを見ればよいか、持ち続けた場合の累計を出す計算機、 そして税額が上がる・下がる条件を整理します。
税額の目安 — 農地は3区分で桁が違う
| 区分 | 評価 | 課税 | 税額のイメージ(10aあたり・年) |
|---|---|---|---|
| 一般農地(市街化区域の外。生産緑地地区内の農地も同様) | 農地評価(農地としての売買実例価格が基準) | 農地の負担調整措置 | 千円規模 |
| 一般市街化区域農地(三大都市圏の特定市以外の市街化区域) | 宅地並評価(近傍宅地の価格 − 造成費相当額) | 農地に準じた課税(課税標準1/3 + 農地の負担調整) | 数万円 |
| 特定市街化区域農地(三大都市圏の特定市の市街化区域) | 宅地並評価 | 宅地並課税(課税標準1/3 + 宅地の負担調整) | 十数万円 |
出典は農林水産省の資料「農地の保有に対する税金(固定資産税)」です。 同じ「農地」でも市街化区域に入るかどうかで100倍近い差が出るため、 まず自分の農地がどちらかを知ることが先決です。 当サイトの地図で区画を表示すると、スコアカードに区域区分の目安が出ます (確定は市町村の都市計画担当課・納税通知書で)。
仕組み — 税額 = 課税標準額 × 1.4%(+ 都市計画税)
- 誰が払う: 毎年1月1日時点の所有者。相続後、名義が故人のままでも相続人が納税義務を引き継ぎます
- 税率: 固定資産税は標準税率1.4%(市町村条例で異なることがある)。 市街化区域の土地には原則として都市計画税(上限0.3%)も加わる
- 課税標準額: 評価額そのものではなく、急な負担増を抑える 負担調整措置を経た金額。一般農地は前年度の課税標準額に負担調整率(1.025〜1.1)を 乗じた額と本則(評価額×税率)の低いほう
- 免税点: 同一市町村内の土地の課税標準額の合計が30万円未満なら課税されない。 評価の低い一般農地だけなら納税通知が来ないこともある
- 納税通知書・課税明細書: 毎年4〜6月ごろ送付。筆ごとの「評価額」「課税標準額」「税相当額」が 載っているので、計算の元はここを見る
持ち続けるコストの計算機
納税通知書の課税明細書にある課税標準額(固定資産税分)を入力すると、 年税額と、持ち続けた場合の累計を出します。明細書が手元にない場合は、 下の目安ボタンで区分ごとの代表値を入れられます。
税額が上がる条件 — 遊休農地の課税強化(約1.8倍)
耕作されていない農地は、農業委員会の利用状況調査・利用意向調査の対象になります。 所有者に農業上の利用の意思がない等の場合、農業委員会は 農地中間管理機構(農地バンク)と協議すべき旨を勧告することがあり、 勧告を受けた遊休農地(農業振興地域内)は、農地評価で用いる限界収益率0.55を 乗じない評価になります。結果として税額は通常の約1.8倍です(2017年度から)。
「安いから放っておく」が通用しなくなる条件がこれです。勧告の前に意向調査が来るので、 その時点で農地バンクに貸す意思を示すのが現実的な対応になります。
税額が下がる条件 — 農地バンクに10年以上貸す
2026年4月1日以降、地域計画ごとに、所有する農地の全部を同一年に農地バンクに貸し付けた人に対し、 10年以上の期間で貸し付けた農地の固定資産税を3年間2分の1にする軽減措置があります (農林水産省「農地バンクに関するよくある質問」)。「全部」「同一年」「10年以上」の3条件が付くので、 一部だけ貸す・短期で貸す場合は対象外です。適用の可否は市町村・農地バンクに確認してください。
持ち続ける vs 手放す — お金以外も含めて比べる
| 持ち続ける | 農地バンクに貸す | 国庫帰属 | |
|---|---|---|---|
| 毎年のお金 | 固定資産税(一般農地は年千円規模/10a)+ 草刈り等の管理費 | 固定資産税は続くが賃料を受け取る。条件により3年間1/2 | なし(帰属後) |
| 一時のお金 | なし | 原則なし | 手数料14,000円/筆 + 負担金(20万円 or 面積算定) |
| 手間 | 管理、相続のたびの登記・届出 | 契約時のみ。期間満了で必ず返ってくる | 申請準備(境界・撤去・書類)、標準処理期間8か月 |
| つまずく条件 | 勧告で税額約1.8倍、次の相続人に同じ悩みが移る | 借り手がいない地域では成立しない | 要件(貸している・境界不明・崖など)で使えない |
お金だけで見れば一般農地を持ち続けるのは安い選択です。問題は「誰が管理し、誰に引き継ぐか」で、 ここが決まらないなら、借り手がいるうちに貸す・手放す判断を先送りしないほうが得になりやすい。 条件から整理するには農地の出口チェック(無料・5問)、 選択肢の全体像は農業をしない人の農地相続 — 6つの選択肢と期限へ。
よくある質問
農地の固定資産税は年間いくらくらいですか?
農林水産省の資料では、一般農地(市街化区域の外の農地)は10aあたり年「千円」規模、市街化区域農地は「数万円」、三大都市圏の特定市の市街化区域農地(特定市街化区域農地)は「十数万円」が税額のイメージとされています。実額は納税通知書の課税明細書に記載された課税標準額×税率(標準1.4%)で、市町村・地域差が大きいので明細書で確認してください。
田んぼを相続したら固定資産税は誰が払いますか?
固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課されます。亡くなった方の名義のままでも、相続人が納税義務を引き継ぎます(多くの市町村は相続人代表者の届出や現所有者の申告を求めています)。相続登記は2024年4月から義務化されており、3年以内に行う必要があります。
耕作していない農地は固定資産税が上がりますか?
上がる場合があります。農業委員会から農地中間管理機構(農地バンク)と協議すべき旨の勧告を受けた遊休農地は、農地評価で用いる0.55の限界収益率を乗じない評価になり、税額が通常の約1.8倍になります(2017年度から)。勧告の対象は農振地域内の遊休農地で、所有者に利用の意思がない等の場合です。
農地バンクに貸すと固定資産税は安くなりますか?
2026年4月1日以降、地域計画ごとに所有する農地の全部を同一年に農地バンクに貸し付けた場合、10年以上の期間で貸し付けた農地の固定資産税が3年間2分の1になる軽減措置があります(農林水産省)。適用条件は市町村・農地バンクに確認してください。
固定資産税がかからない農地はありますか?
同じ市町村内に所有する土地の課税標準額の合計が30万円未満なら、土地の固定資産税はかかりません(免税点)。評価額の低い一般農地を少しだけ持っている場合は、これに該当して納税通知が来ないことがあります。
持ち続けるのと国庫帰属、どちらが安いですか?
一般農地の固定資産税は年数千円規模のことが多く、30年持っても十数万円に収まる例が多い一方、国庫帰属の負担金は原則20万円、農用地区域内などの農地は10aで1,128,000円です。お金だけなら持ち続けるほうが安いことが多いのですが、草刈り等の管理、相続のたびの手続き、遊休農地の課税強化、次の世代への引き継ぎまで含めて比べる必要があります。
出典: 農林水産省「農地の保有に対する税金(固定資産税)」(税額のイメージ・負担調整措置)、 農林水産省「遊休農地の課税の強化」、 農林水産省「農地バンクに関するよくある質問」(Q18 税制上のメリット)、 地方税法(税率・免税点)。いずれも2026年8月21日閲覧。税額は市町村が決定するものであり、 本記事の数値は目安です。当サイトの区域表示は公的オープンデータによる参考情報です。
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の手続きは必ず市町村の農業委員会等の窓口でご確認ください。