農地の集約・集積とは — 違い、進め方、地域計画(目標地図)との関係、候補のまとまりを地図で見つける方法
最終更新: 2026-08-23
規模拡大や新規参入を考えるとき、「集積」と「集約化」は似た言葉として一緒に出てきますが、指している内容は違います。 集積は面積を増やすこと、集約化は増やした農地を使いやすくまとめることです。 国の統計上、担い手への集積は6割を超えましたが、集約化はこれからが本番で、 2025年度から全市町村で動き出した地域計画(目標地図)がその道具になっています。 この記事は、担い手(借りる側・まとめる側)の視点で、定義の違い、現在地の数字、進め方と窓口、 事例、注意点を整理し、最後に候補のまとまりを地図データで探す方法を紹介します。 出し手(貸す側)の手順は農地バンクに貸すには、 個別の貸借手続きは利用権設定と農地バンクの使い方にあります。
集積と集約化の違い — 定義と現在地の数字
農林水産省の用語解説(食料・農業・農村白書)では次のように定義されています。
| 集積 | 集約化 | |
|---|---|---|
| 定義(農林水産省) | 農地を所有し、又は借り入れること等により、利用する農地面積を拡大すること | 農地の利用権を交換すること等により、農地の分散を解消することで農作業を連続的に支障なく行えるようにすること |
| ひとことで | 面積を増やす | まとめて団地にする |
| 主な手段 | 農地バンク経由の貸借、売買、相続 | 利用権の交換、換地・交換分合、基盤整備にあわせた再配置 |
| 測り方 | 担い手への集積率(全耕地面積に占める担い手の利用面積の割合) | 団地面積の割合、経営体あたりの団地数 |
| 効くもの | 売上規模 | 移動時間・機械稼働率・水管理の手間 |
数字で見ると、集積は進み、集約化が課題として残っている状況です。
- 担い手への農地集積率は62.1%(令和7年度末、全耕地面積に占める割合)。 前年度から0.7万ha増で、農地バンク創設前より13.4ポイント上昇(農林水産省、2026年6月公表)
- 農地バンク経由の集積は約25.9万haで、新規集積面積全体の約6割。担い手が農地を得るルートは農地バンクが主流になっています
- 政府目標は2030年度までに7割(食料・農業・農村基本計画、2025年4月閣議決定)
- 地域計画は全国1,615市町村・18,894地区で策定済み(令和7年4月末時点)。区域内の農用地等422万haのうち、 将来の受け手が位置付けられていない農地が134万ha(約3割)。関東・中国四国でその割合が高い
- 農林水産省の事例集には「担い手への集積率が85%でも農地が分散している」地区が登場します。 集積が済んでも、出入り作の解消(集約化)は別の取り組みとして残ります
進め方 — 地域計画(目標地図)と農地バンクが入口
地域計画とは
2023年4月施行の改正農業経営基盤強化促進法で、市町村は農業者・農業委員会・農地バンク・JA・土地改良区などの 話し合いを踏まえ、10年後に誰がどの農地を耕作するかを描いた目標地図を含む地域計画を 2025年3月末までに策定しました。農地バンクはこの地域計画に基づいて農地を借り受け、 目標地図に位置付けられた担い手に貸し付けます。 参入を考える法人にとって重要なのは、農業参入ポータル(農林水産省)が明記しているとおり、 農地を確保するには原則として目標地図に位置付けられている必要があるという点です。 位置付けは固定ではなく、地域計画は毎年見直し(ブラッシュアップ)されるので、 早めに意向を伝えて協議の場に入るのが近道です。 受け手を募集している市町村は、農林水産省の地域計画ページで緑色表示で公表されています。
担い手側のステップと窓口
| ステップ | やること | 窓口 |
|---|---|---|
| 1. 地域の当たりを付ける | 作物・規模から候補市町村を絞る。受け手未定の農地が多い地域、まとまった農地がある地域を机上で洗い出す | 農林水産省「地域計画」ページ(受け手募集市町村)、候補地スクリーニング |
| 2. 意向を伝える | 営農計画(作物・面積・地域・時期)を持って相談。地域計画の協議の場に参加する | 市町村の農政担当課、農業委員会 |
| 3. 目標地図に位置付け | 地域の話し合いで受け手として位置付けられる。参入法人は地元説明会への参加が求められることが多い | 市町村(協議の場) |
| 4. 農地バンクで貸借 | 機構が所有者から借り受け、担い手に貸し付ける。賃料・期間は出し手・受け手・機構の三者協議。農地法3条の許可は不要 | 都道府県の農地バンク(連絡先は都道府県ページの相談先) |
| 5. まとめる(集約化) | 離農のタイミングで隣接地を引き受ける、利用権を交換する、基盤整備にあわせて再配置する | 農地バンク、土地改良区、市町村 |
地域への支援金(農地集約化促進事業)
農林水産省は、農地バンクを活用して集約化に取り組む地域への支援金を「農地集約化促進事業」として案内しています。 地域の農地をまとめて農地バンクに貸し付けた場合(従来の地域集積協力金に相当)と、 農地バンクを活用して団地化を進めた場合(従来の集約化奨励金に相当)の2本立てで、 交付先は受け手個人ではなく地域です。受け手にとっては、出し手や集落に 「まとめて貸すと地域に支援金が入る」と説明できる材料になります。 単価と要件は年度・都道府県の配分基準で変わるため、断定せず最新のリーフレットと都道府県の農地バンクで確認してください。 また、農地バンクが借り入れた農地を対象に都道府県が実施する農地中間管理機構関連農地整備事業 (対象農地すべてを15年以上農地バンクに貸し付ける、担い手への集積率8割以上などの要件で農家負担なしの基盤整備)も、 集約化と大区画化を同時に進める手段として使われています。
事例に見る集約化の4パターン
農林水産省「集約化に向けた目標地図の事例集」(2025年11月)は、集約化が進んだ地区を4つのケースに分けています。 担い手側の動き方の参考になるものを抜き出します。
- 話し合いと営農体制の構築 — 基盤整備済みだが分散錯圃だった水田地帯で、農地バンクを使い、後継者不在の耕作者のリタイアに合わせて 段階的に6名の受け手へ集積・集約化。市内では集約化の進んだ地域と進んでいない地域で、 面積当たりの機械導入コストに3倍の差が出たとされています
- 基盤整備を契機に — 国営農地再編整備や県のほ場整備に合わせて、地権者全員の同意のもと農事組合法人や認定農業者に集約。 地域内の賃料を統一して交換を進めやすくした地区もあります
- 地域外・他産業からの参入 — 継続が危ぶまれた集落営農(7.8ha)を、県のマッチングイベントで関心を持った首都圏の米生産法人が現地法人を立ち上げて継承。 別の地区では地元建設業者が果樹(キウイ)で参入し、廃業した畜産農家の耕作エリアを企業誘致エリアとして区分け。 県外のれんこん法人が誘致検討委員会との調整を経て参入し、地域計画に位置付けられた例もあります
- ゾーニング — 今後も確実に耕作できる営農エリアと保全管理エリアに分け、営農エリアで担い手の耕作範囲を中心に集約
どの事例も「今後の課題」として、賃料のばらつきの調整、所有者不明農地の探索、米価上昇で不在地主が貸し渋る傾向、 畦畔除草など共有部分の管理の役割分担を挙げています。参入側は、農地そのものより 地域の合意形成に時間を割く前提で計画を組むのが現実的です。
集約のデメリット・注意点
- 時間がかかる — 集約化は所有者全員の合意と離農のタイミングに依存し、目標地図は10年スパンで描かれています。 初年度からまとまった団地が手に入ることは多くありません
- 条件の良くない区画も引き受ける — 交換・団地化の過程で、排水不良地や不整形地をセットで求められることがあります。 基盤整備の予定があるかを確認してから判断します
- 賃料は地域で揃う — 集約を進めやすくするために賃料を地域内で統一する地区があり、個別交渉は効きにくくなります。 水準は地域差が大きいので、ここでは断定せず農地バンクと市町村で確認してください
- リスクも集中する — 分散の解消は、裏返せば水害・鳥獣害・連作障害などの局所リスクが一か所に集まることです。 ハザード情報と排水条件は候補段階で見ておきます
- 目標地図に位置付けがないと農地は来ない — 地域計画外の法人に農地バンクから貸し付けられることは原則ありません。 ここを飛ばして個別に所有者を回っても、利用権設定の手続きで市町村・農業委員会の調整に戻ります
出し手側から見た注意点(期間が長い、貸している間は国庫帰属に出せない等)は 農地バンクに貸すにはに整理しています。相手の事情を知っておくと話し合いが進みます。
候補のまとまりを地図で見る — ジオ農地の「一団の農地」
目標地図は市町村ごとに作られ、公表の形式も様々なので、複数の市町村をまたいで 「まとまった農地がどこにあるか」を横並びで見る手段は多くありません。 ジオ農地では、農林水産省の筆ポリゴンを使い、隣り合う区画を機械的につないだ「一団の農地(まとまり)」を 全国で計算し、区画ごとに一団の合計面積(ha)と筆数を表示しています。 業務向けの候補地スクリーニング(農業法人向けプリセット)では、 この一団の面積が3ha以上なら「一致」、1ha以上なら「要確認」として並べ、 衛星画像からの非耕作の推定、接道、傾斜、営農活用スコア、集落の担い手動向とあわせて候補を絞れます。
※ 「一団の農地」は筆ポリゴンの隣接関係だけから求めた近似で、農道・水路による分断や、所有者・権利関係・ 貸借の可否・耕作者が同一かどうかは一切考慮していません。机上で候補地域の当たりを付けるための参考値であり、 実際の耕作単位と所有の分かれ目は現地と農業委員会で確認してください。 公的な農地情報はeMAFF農地ナビで確認できます。
候補の市町村が見えたら、次は市町村の農政担当課に営農計画を持って相談し、地域計画の協議の場に入る段階です。 法人・企業向けのまとめは農業法人・参入企業向けの使い方にあります。
よくある質問
農地の集積と集約化の違いは何ですか?
農林水産省の用語解説では、集積は「農地を所有し、又は借り入れること等により、利用する農地面積を拡大すること」、集約化は「農地の利用権を交換すること等により、農地の分散を解消することで農作業を連続的に支障なく行えるようにすること」です。集積は面積を増やすこと、集約化は増やした農地を一か所にまとめること、と覚えると区別できます。担い手への集積率は62.1%(令和7年度末)まで進んだ一方、集約化(団地化)は地域差が大きく、地域計画の目標地図で後押しする段階にあります。
農地集約化促進事業とは何ですか?
農地バンク(農地中間管理機構)を活用して農地の集約化に取り組む地域に支援金を交付する農林水産省の事業です。地域の農地をまとめて農地バンクに貸し付けた場合(従来の地域集積協力金に相当)と、農地バンクを活用して団地化を進めた場合(従来の集約化奨励金に相当)の2本立てで、交付先は受け手個人ではなく地域です。単価・要件は年度と都道府県の配分基準で変わるため、最新のリーフレットと都道府県の農地バンク・市町村の農政担当課で確認してください。
農業法人や参入企業が集約された農地を借りるにはどうすればよいですか?
2025年度以降、農地を確保するには原則として市町村の地域計画(目標地図)に受け手として位置付けられている必要があります。まず市町村の農政担当課・農業委員会に営農の意向(作物・規模・希望地域)を伝え、地域計画の協議の場に参加します。受け手を募集している市町村は農林水産省の地域計画ページで公表されています。貸借は農地バンク経由が中心で、契約・賃料は機構を介します。
農地集約のデメリットはありますか?
受け手側では、(1)地域の合意形成が前提のため時間がかかり、離農のタイミングに合わせて段階的にしか進まない、(2)交換や団地化の過程で条件の良くない区画も引き受けるよう求められることがある、(3)賃料は地域で揃える調整が入り個別交渉は効きにくい、(4)一か所に集中するぶん、水害や鳥獣害など局所的なリスクも集中する、といった点があります。出し手側の注意点は農地バンクに貸す記事で解説しています。
ジオ農地の「まとまり(一団の農地)」は何を表していますか?
筆ポリゴン(農林水産省)の隣接関係から、隣り合う区画を機械的につないで作った「一団の農地」の合計面積(ha)と筆数です。所有者・権利関係・貸借の可否・耕作者が同じかどうかとは無関係で、地図上で連続している農地のかたまりを示すだけの参考値です。候補地域の当たりを付けるために使い、実際の耕作単位や所有の分かれ目は現地と農業委員会で確認してください。
参考(一次資料、いずれも2026年8月23日閲覧): 農林水産省「令和7年度の農地中間管理機構の実績等の公表について」(2026年6月16日)、 「用語の解説」(食料・農業・農村白書)、 「地域計画(地域農業経営基盤強化促進計画)」、 「地域計画の策定状況(令和7年4月末時点)」、 「集約化に向けた目標地図の事例集」(2025年11月)、 「農地中間管理機構」、 「リース法人の参入状況(令和7年1月1日現在)」、 「食料・農業・農村基本計画」(2025年4月)、 農業参入ポータル「参入までの流れ」、 農林水産省農村振興局「農地の整備」(農地中間管理機構関連農地整備事業)。 「一団の農地」は筆ポリゴン(農林水産省)を加工して当サイトが算出した参考値で、権利関係・貸借の可否を示すものではありません。
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の手続きは必ず市町村の農業委員会等の窓口でご確認ください。