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法人が農地を借りる・買うには — 農地所有適格法人の要件、一般法人のリース方式、手順と候補地の探し方

最終更新: 2026-08-23

法人が農地を確保する方法は「借りる」と「所有する」で入口がはっきり分かれます。 借りるだけなら、建設業や食品会社のような一般法人でも全国どこでも可能(リース方式)。 所有するには農地所有適格法人の要件を満たす必要があります。 この記事は農業法人・参入企業の農地担当者向けに、両者の要件を農林水産省の資料と農地法の条文どおりに整理し、 手続きの2ルート、参入後の義務、そして「どの地域の、どの農地を候補にするか」を机上で絞る手順までをまとめます。 個人の農地取得の基本は農地法3条許可とは、 農地バンクの使い方は利用権設定と農地バンクの使い方にあります。

結論 — 借りるなら一般法人でも可、所有するなら農地所有適格法人

一般法人(リース方式)農地所有適格法人
できること 借りる(賃借権・使用貸借)のみ 所有も貸借も可
根拠 農地法3条3項(解除条件付き貸借) 農地法2条3項
法人形態 制限なし(株式会社・NPO法人等も可) 非公開の株式会社、農事組合法人、持分会社に限る
主な要件 解除条件付き契約 / 地域との役割分担 / 業務執行役員等1人以上が常時従事 事業(農業が売上の過半) / 議決権(農業関係者が過半) / 役員(過半が常時従事+1人以上が農作業)
手続き 農業委員会の3条許可、または農地バンクの農用地利用集積等促進計画(どちらも共通)
毎年の報告 農地法6条の2 農地法6条
参入数(令和7年1月1日現在) 延べ5,037法人・借入面積計20,627ha・1法人平均4.1ha 22,693法人・経営面積計726,795ha・1法人平均32.0ha

どちらのルートでも、農地のすべてを効率的に利用すること(機械・労働力を適切に使う営農計画があること)と 周辺の農地利用に支障を及ぼさないこと(水利調整に参加する、有機農業が行われている地域で化学肥料・農薬を使わない等) という個人と共通の基本要件は前提になります。かつての下限面積要件は2023年4月に廃止されています。

農地所有適格法人の4要件(農地法2条3項)

農地を所有できる法人は、次の4要件をすべて満たす法人です。 「農業生産法人」は2016年の農地法改正で現在の名称に変わり、議決権要件も同じ改正で緩和されたものが現行制度です。

要件内容
1. 法人形態 農事組合法人、株式会社(公開会社でないもの=全株式に譲渡制限があるもの)、持分会社(合名・合資・合同会社)
2. 事業 主たる事業が農業であること(売上高の過半)。自ら生産した農畜産物の製造・加工、貯蔵・運搬・販売、 農業資材の製造、農家民宿など農村滞在型余暇活動施設の運営といった関連事業は「農業」に含めて計算できる
3. 議決権 農業関係者が総議決権の過半を占めること(持分会社は社員数の過半)。農業関係者とは、法人の農業に常時従事する個人、 法人に農地を提供した個人、農地バンク経由で法人に農地を貸している個人、基幹的な農作業を委託している個人、 地方公共団体・農地バンク・農協・農協連合会。食品会社など農業関係者以外の出資は2分の1未満まで
4. 役員 ①役員(取締役等)の過半が法人の農業に常時従事する構成員(原則年間150日以上)であること、かつ ②役員または重要な使用人の1人以上が法人の農業に必要な農作業に原則年間60日以上従事すること

実務で引っかかりやすいのは3と4です。親会社が過半を出資する農業子会社は、そのままでは議決権要件を満たしません (農業関係者以外が過半になるため)。このため「まずリース方式で借りる」「地域の農業者・農地提供者に出資してもらう」 「認定農業者として食品事業者等と連携する農業経営発展計画制度の議決権特例を使う」「既存の農地所有適格法人からの のれん分け(グループ会社化)の特例を使う」といった設計が検討されます。特例の適用条件は個別性が高いので、 農林水産省の資料を読んだうえで農業委員会・都道府県の窓口に確認してください。

一般法人が農地を借りる — リース方式(解除条件付き貸借)の3要件

2009年12月の農地法改正で、農地所有適格法人でない法人も貸借であれば全国どこでも参入できるようになりました (農地法3条3項)。農業委員会は、次の3要件をすべて満たすときに、農地所有適格法人要件・常時従事要件にかかわらず許可できます。

  1. 解除条件 — 借り手が農地を適正に利用していないと認められる場合に貸借を解除する条件が、 書面による契約に付されていること。農業委員会は契約時に、原状回復義務の所在、その費用負担、 中途撤退時の違約金や損害賠償の取り決めも確認します
  2. 地域との適切な役割分担 — 地域の他の農業者と役割分担しながら継続的かつ安定的に農業経営を行う見込みがあること。 具体例は集落の話し合いへの参加、農道・水路・ため池など共同利用施設の取り決めの遵守、獣害対策への協力で、 確約書の提出や農業委員会との協定で担保されることがあります。機械・労働力の確保状況から継続の見込みが判断されます
  3. 業務執行役員等の常時従事 — 業務執行役員または重要な使用人(支店長・農場長・農業部門長など名称を問わず、 耕作事業の権限と責任を持ち地域調整を担える者)の1人以上が、法人の耕作事業に常時従事すること。 ここでいう従事は農作業に限らず、営農計画の策定やマーケティング等の経営・企画業務でも可とされています

リース方式には農地所有適格法人のような法人形態・議決権の縛りがなく、参入法人の業種は農畜水産業47%、食品関連11%、 サービス業10%、建設業7%と幅広く、借入面積は50a未満が32%、1ha未満で半数超(令和7年1月1日現在)。 小さく始めて広げる進め方が実態です。なお農地所有適格法人の要件を満たす法人も、リース方式で借りることができます。

手順 — 農業委員会の3条許可と農地バンクの2ルート

  1. 事前相談 — 農地のある市町村の農業委員会事務局・農政課、都道府県の企業参入窓口、農地バンクに 参入の意向・作目・面積・地域を伝える。国の農業参入ポータル (農林水産省)が「知る→構想する→相談する→計画する→始める」の流れと相談窓口をまとめています
  2. 営農計画・体制をつくる — 作目、機械・労働力、販路、3〜5年の損益見通し、常時従事する役員・使用人の配置、 地域の共同活動への参加方針。農地所有適格法人を目指すなら定款・株主構成・役員構成を4要件に合わせる
  3. 農地の確保(どちらか)
    • ルートA: 農業委員会の3条許可 — 所有者と合意した農地について、農地のある市町村の農業委員会に許可申請。 複数市町村にまたがる場合はそれぞれの農業委員会の許可が必要。リース方式は農業委員会が許可前に市町村長へ通知し、 市町村長が意見を述べることができる仕組み。流れは農地法3条許可とは
    • ルートB: 農地バンク(農地中間管理機構) — 借受希望者として登録し、市町村の地域計画に基づく 農用地利用集積等促進計画の公告で賃借権が設定される(3条許可は不要。リース方式の3要件は同様に求められる)。 2025年度からは地域計画に基づく貸借に一本化されているので、まとまった面積を集約したい法人はこちらが本線。 詳しくは利用権設定と農地バンクの使い方
  4. 許可・公告後 — 契約の効力発生、(所有なら)所有権移転登記。毎年の報告義務が始まる(後述)

候補地の探し方 — 地域を決め、机上で絞り、農業委員会に照会する

法人の農地確保でいちばん時間がかかるのは、要件の理解より「どこで、どの農地を」の初動です。 順番を間違えると、条件の合わない区画を現地で1つずつ見る羽目になります。おすすめの順序は次の4段階です。

  1. 地域(市町村)を決める — 作目に合う気候・地形、販路・拠点からの距離、そして その地域に貸借の動きがあるか。農林業センサス等の集落統計から、借地率の高さ・伸び、法人経営体・集落営農の有無を 集落単位で見られます(当サイトの「農地の借り手がいる地域か」表示。解説)。 地域計画(目標地図)で担い手が足りていない地域は、参入の相談が通りやすい傾向があります
  2. 机上で候補を絞る — 筆ポリゴン(農林水産省)などの公的オープンデータから、 まとまり(一団の農地の面積)、非耕作の推定(衛星NDVIによる参考値)、接道傾斜、 災害・農振区域などの物理条件で並べ替え、現地確認と照会の優先順位を付けます。 候補地スクリーニングはこの段階の道具で、市町村を選ぶと条件ごとの一致/要確認と 「次に確認すること」が候補カードで並びます
  3. 農業委員会・農地バンクに照会する — 机上の候補を持って「この一団は地域計画でどう位置付けられているか」 「貸し出し意向のある農地はあるか」を聞く。区画ごとの公的な台帳情報(地目・面積・遊休農地の判定など)は eMAFF農地ナビ(農林水産省)で確認できます。 当サイトは机上の一次スクリーニングまでで、公式情報の確認先は置き換えません
  4. 現地を見る — 進入路の幅、水利(取水・排水)、周辺の作付け、鳥獣害の痕跡、資材置き場の確保。 ここで初めて所有者側との条件調整と許可申請に進みます

※ 机上データは区画の形状・推定値・周辺条件を示す参考情報で、権利関係・貸借や取得の可否・転用の可否は示しません。 最終確認は必ず農業委員会・農地バンクで行ってください。

参入後の義務と注意点

業務として複数地域の候補比較や初動調査を繰り返す法人向けには、農業法人・参入企業向けの使い方にまとめています。

よくある質問

法人が農地を借りるには何が必要ですか?

株式会社などの一般法人でも、農地法3条3項のリース方式(解除条件付き貸借)なら全国どこでも農地を借りられます。要件は(1)農地を適正に利用しない場合に契約を解除する条件が書面契約に付いていること、(2)地域の他の農業者との適切な役割分担のもとで継続的・安定的に農業経営を行う見込みがあること、(3)業務執行役員または重要な使用人の1人以上が法人の耕作事業に常時従事することの3つに加え、農地のすべてを効率的に利用し周辺農地に支障を及ぼさないという個人と共通の要件です。手続きは農地のある市町村の農業委員会の許可か、農地バンク(農地中間管理機構)の農用地利用集積等促進計画のどちらかで行います。

農地所有適格法人かどうかを判断するには?

農地法2条3項の4要件をすべて満たしているかで判断します。(1)法人形態が農事組合法人・非公開の株式会社・持分会社(合名・合資・合同会社)のいずれか、(2)主たる事業が農業(自ら生産した農産物の加工・販売等の関連事業を含む)で売上高の過半を占める、(3)農業関係者(法人の農業に常時従事する個人、農地を提供した個人、農地バンク経由で貸している個人、基幹的な農作業を委託している個人、地方公共団体・農地バンク・農協など)が総議決権の過半を持つ、(4)役員の過半が法人の農業に常時従事する構成員(原則年間150日以上)で、かつ役員または重要な使用人の1人以上が農作業に原則年間60日以上従事する、の4つです。個別の法人が該当するかは、定款・株主名簿・役員の従事実態を基に農地のある市町村の農業委員会で確認してください。

一般法人(普通の株式会社)は農地を取得できますか?

所有権の取得(購入)は農地所有適格法人の要件を満たす法人に限られ、一般法人は原則できません。一方、借りる(賃借権・使用貸借)ことはリース方式の要件を満たせば可能です。農地を所有したい場合は、農業子会社を設立して農地所有適格法人の要件を満たす形にするか、まずリース方式で借りて実績を作る進め方が一般的です。どちらが適切かは事業計画と農業委員会への事前相談で決めてください。

農地所有適格法人の一覧はどこで見られますか?

農林水産省は令和7年1月1日現在で農地所有適格法人が22,693法人、リース方式で参入した法人が延べ5,037法人という統計(都道府県別・営農類型別の法人数)を公表していますが、個々の法人名を網羅した全国一覧は、当サイトが確認した範囲では公表されていません。地域の法人経営体や集落営農の有無は農林業センサス等の集落統計から傾向を把握でき、当サイトでは「農地の借り手がいる地域か」として集落単位で表示しています。

借りた後・所有した後に義務はありますか?

あります。農地所有適格法人(農地法6条)もリース方式で借りた法人(同6条の2)も、毎年、事業年度終了後3か月以内に事業の状況等を農業委員会へ報告する義務があり、農地所有適格法人が報告を怠る・虚偽報告をすると30万円以下の過料の対象です(同68条)。またリース方式で農地を適正に利用していない場合、農業委員会の勧告や許可の取消し・契約解除の対象になり、農地所有適格法人が要件を満たさなくなった場合は是正されなければ最終的に国が農地を買収する仕組み(同7条)があります。

参考(一次資料)

いずれも2026年8月23日閲覧。統計値は農林水産省経営局調べ(令和7年1月1日時点)。 制度は改正されることがあるため、申請時点の要件は農業委員会・都道府県の窓口で確認してください。

本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の手続きは必ず市町村の農業委員会等の窓口でご確認ください。