営農型太陽光発電の用地要件と一次スクリーニング — 一時転用許可の仕組み・制度改正の動向・机上で見る条件
最終更新: 2026-08-23
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の用地開発は、発電側の条件(日射・系統・接道)と農地側の条件 (農振農用地区域・農地区分・地域計画・営農の継続性)を同時に満たす場所を探す作業です。 農地側の条件は公式にはeMAFF農地ナビや農業委員会で確認するものですが、 候補を数百筆から数十筆に絞る最初の机上段階で全部を窓口照会するのは現実的ではありません。 この記事では、制度の要件を一次資料どおりに整理したうえで、何が机上で見られ、何が窓口でしか分からないかを切り分け、 候補地を絞り込む手順を示します。制度の最新動向(2026年の改正案)も含みます。
営農型太陽光発電とは — 「農地のまま」発電できる仕組み
農林水産省の定義では、営農型太陽光発電は「一時転用許可を受け、農地に簡易な構造でかつ容易に撤去できる支柱を立てて、 上部空間に太陽光を電気に変換する設備を設置し、営農を継続しながら発電を行う取組」です。 ポイントは、転用されるのは支柱の部分だけで、下の農地は農地のまま営農を続ける点にあります。 だから農用地区域内農地(青地)や第1種農地のように通常の転用が原則不許可の農地でも、一時転用として申請の道があります。
規模感として、一時転用許可件数は2023(令和5)年度末までの累計で6,137件・下部農地面積1,361.6haです。 一方、下部農地の営農に支障があったものが24%(1,221件)、栽培作物はさかき・しきみ等の観賞用植物が36%、 設置者は発電事業者が73%という実態が公表されており、これが後述の制度改正の背景になっています (農林水産省「営農型太陽光発電について」令和8年1月)。
一時転用許可の要件 — 期間と「営農の適切な継続」
2024(令和6)年4月1日に農地法施行規則が改正され、それまで通知で定めていた許可基準が省令に明記されるとともに、 「営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドライン」(令和6年3月25日付け、令和7年3月31日改正)が施行されました。 用地選定に直結する要件は次のとおりです。
- 許可期間 — 原則3年以内(再許可可)。次のいずれかに当たる場合は10年以内: (1)認定農業者等の担い手が自ら所有する農地または利用権等を持つ農地で営農する場合、 (2)遊休農地を再生利用する場合(再許可時を除く)、 (3)第2種農地または第3種農地を利用する場合。 裏返すと、農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地で担い手以外が営農する場合は3年以内です(Q&A問14)。 複数筆のうち一部だけが該当しても計画全体は10年になりません(筆ごとに申請を分けることは可能。Q&A問20)
- 営農の適切な継続 — 下部農地の農作物の単収が、同じ年産の市町村内の平均的な単収と比較しておおむね2割以上減少しないこと (いわゆる「単収8割」。遊休農地を再生利用する場合は当初許可では適用されず、遊休化・捨て作りをしないことが基準)、 農作物の品質に著しい劣化が生じないこと
- 設備の構造 — 農作物の生育に適した日照量を保つ角度・間隔であること、農業機械が使える空間として 最低地上高2m以上を確保すること(垂直設置等で営農条件に影響しない構造は例外)
- 報告と是正 — 毎年、栽培実績書と収支報告書を許可権者に提出。支障があれば改善指導、従わない場合は撤去指導・是正勧告・原状回復命令
- 地域計画との協議 — 地域計画(農業経営基盤強化促進法)の区域内では、協議の場で農地の利用集積等に支障がないとして合意を得た区域内で行うこと。 農用地区域内農地では、農用地の集団化や土地改良事業の妨げにならないことにも留意が求められる
- 権利設定 — 設置者と営農者が別の場合、下部農地の空中に区分地上権等を設定する農地法3条許可を一時転用許可と同時に受け、期間を一致させる
※ 用地を探す側から見ると、「担い手が営農に入れる地域か」「第2種・第3種農地か」「遊休農地か」が 許可期間3年/10年の分かれ目で、事業計画の前提に関わります。ただしいずれも最終的には農業委員会・許可権者の判断です。
農地区分と農振農用地区域 — 用地選定で最初に見る軸
農地転用許可制度では、農地を立地で5つに区分し、通常の転用(恒久転用)の可否を振り分けています。 営農型は一時転用なのでこの区分で不許可になるわけではありませんが、上のとおり許可期間と 審査の厳しさ(農用地区域内では計画達成への支障が重ねて見られる)に効きます。
| 区分 | おおまかな内容 | 通常の転用 | 営農型(一時転用)の期間 |
|---|---|---|---|
| 農用地区域内農地(青地) | 市町村の農業振興地域整備計画で農業上の利用を図る区域に指定 | 原則不許可 | 原則3年(担い手・遊休農地なら10年) |
| 甲種農地 | 市街化調整区域内の特に良好な営農条件の農地 | 原則不許可 | 同上 |
| 第1種農地 | 集団的な優良農地、土地改良事業の対象地等 | 原則不許可 | 同上 |
| 第2種農地 | 市街地化が見込まれる農地、小集団の生産性の低い農地 | 他に立地困難な場合に許可 | 10年以内 |
| 第3種農地 | 市街地の区域内・市街地化の傾向が著しい区域の農地 | 原則許可 | 10年以内 |
ここで重要なのは、甲種・第1〜3種の区分は公開されたGISデータが存在せず、農業委員会への照会でしか確定しないことです。 机上で近いところまで見られるのは「農振農用地区域(青地)か」と「都市計画の区域区分(市街化区域/調整区域/非線引き)か」の2軸までで、 前者は青地・白地の調べ方にまとめています。 農振除外は営農型には不要ですが(一時転用許可を受ければ農振法の開発許可も不要。Q&A問32)、 青地は地域計画・集団化の観点で審査が重くなるため、事業者側では第2種・第3種農地や農振地域外を優先する判断が多くなります。
2026年の制度改正案 — 農山漁村再エネ法の認定が前提になる方向(案の段階)
農林水産省は2025年5月から「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」を6回開催(最終回2026年4月15日)し、 2026年7月24日〜8月22日に関連する省令・告示・基本方針の改正案3件の意見募集を行いました。 改正案の骨子は、営農型の実施手続きを農山漁村再生可能エネルギー法に基づく市町村の基本計画+設備整備計画の認定と、 農地法の一時転用許可の組み合わせに移行するもので、認定にあたっては対象市町村が基本計画を作成済みであることが要件になります。 併せて「望ましい営農型太陽光発電」の基準として遮光率30%未満、最低地上高おおむね3m以上、地域で一般的に栽培される作物、 一定の販売実績などが示されています。
用地開発の観点で先に効くのは市町村の基本計画です。基本計画を作成済みの市町村は2025年3月末時点で112(農林水産省)にとどまり、 候補市町村がこのリストに載っているか、作成予定があるかが、候補地の絞り込みの新しい軸になります。 ただし本記事執筆時点(2026年8月23日)では案の段階で、施行日・経過措置・最終的な数値は確定版で確認してください。 2024年4月より前に許可を受けた既存設備は一時転用期間満了まで従前の扱いとする方向の説明もありますが、これも確定版で確認が必要です。
用地条件チェック表 — 机上で見られること・見られないこと
候補地の条件を「机上(公開データ)で見られるか」で分けると次のようになります。○は当サイトの区画データで見られる項目、 △は近似・参考値、×は公開データが無く窓口や現地でしか分からない項目です。
| 項目 | 机上で見られるか | 確認先 |
|---|---|---|
| 農振農用地区域(青地)か | △ 国土数値情報 農業地域(A12)との重なり。内容年次が古く除外・編入は未反映。岡山県はデータなし | 市町村の農政(農振)担当 |
| 農地区分(甲種/第1〜3種) | × 公開GISなし | 農業委員会 |
| 都市計画区域・区域区分 | ○ 都市計画決定GISデータ(A55)。市街化区域/調整区域/非線引き | 市町村の都市計画・開発許可担当 |
| 傾斜 | ○ 地理院標高タイルから緩(8°未満)/中(8〜15°)/急(15°超) | 現地(区画内の起伏) |
| 災害想定(洪水・土砂) | ○ 洪水浸水想定(最大規模)・土砂災害警戒区域との重なり(10%以上) | 市町村ハザードマップ(最新・正式) |
| 接道・搬入路 | △ 国土数値情報 道路(N13、位置精度±25m)。25m以内の車道と幅員区分 | 現地・道路管理者 |
| 日照(冬季) | △ 冬至8〜16時の地形による日陰時間。建物・樹木の影は含まない | 現地・日影シミュレーション |
| 一団の面積(まとまり) | △ 筆ポリゴンの隣接関係からの近似。農道・水路・権利の分かれ目は未考慮 | 現地・登記・所有境界 |
| 現在の利用状況(遊休農地か) | △ 衛星(NDVI)からの推定。ハウス・マルチ栽培を誤判定しうる。公的な遊休農地判定ではない | 農業委員会の利用状況調査、航空写真、現地 |
| 地域計画の区域・協議の場 | × 区域図は市町村公表(GISは限定的) | 市町村・農業委員会 |
| 市町村の基本計画(農山漁村再エネ法) | △ 農林水産省の作成状況一覧で市町村単位に確認 | 市町村 |
| 系統連系(空き容量・接続費) | × | 一般送配電事業者 |
| 所有者・権利関係・所有者意向 | × 当サイトは所有者情報を扱わない | 登記情報、農業委員会、農地バンク |
候補地の絞り込み手順 — ジオ農地の再エネプリセット
当サイトの候補地スクリーニングには再エネ用のプリセットがあり、 市町村(複数可)を選ぶと、農振/農用地区域・都市計画・傾斜・災害・接道・日照・まとまり・利用状況の8条件を 区画ごとに「一致/要確認/不一致/データなし」で並べます。初期条件は「農振地域外・緩〜中傾斜・土砂災害警戒区域外」で、 条件はあとから外せます。並びは一致数の多い順で、重み付きの合成スコアは作っていません(根拠となる値と確認先を条件ごとに添えます)。 事業者向けの使い方のまとめは営農型太陽光・再エネ事業者向けページにあります。
- 市町村を決める — 上記の基本計画の作成状況、系統の空き、地域計画の方針を先に見て市町村を数個に絞る
- プリセットで一覧にする — 8条件の一致数順に候補が並ぶ。まとまり(一団)は1ha以上=一致、0.5ha以上=要確認
- 一団単位で見る — 同じ一団に属する筆をまとめ、所有の分かれ目が多そうな場所は後回しにする
- 案件に保存・CSV — 候補を案件リストに入れ、CSVで共有。CSVには条件ごとの判定と確認先が付く
- 窓口照会へ — 残った候補について、農地区分・地域計画・農振の現況を農業委員会と市町村に照会し、系統は送配電事業者へ
※ このツールは転用の可否・農地区分(甲種/第1〜3種)・許可の見込みを判定しません。判定結果は公的オープンデータの机上スクリーニングで、 農振は国土数値情報A12(年次が古い)、都市計画はA55、傾斜は標高タイル、災害はA31/A33からの近似です。 データの整備状況は県ごとに異なり、無い列は「データなし」になります(データ整備状況)。 eMAFF農地ナビの情報は取り込んでおらず、公式情報はeMAFF農地ナビで確認してください。
用地選定で避けられるトラブル・問題点
- 営農が続かない — 最大のリスク。営農者(担い手)が確保できない地域で用地だけ先に押さえると、再許可が下りず撤去指導の対象になりうる。営農者の確保は用地と同時に進める
- 地域計画との不整合 — 地域計画で担い手への集積が予定されている農地に後から営農型を持ち込むと協議の場で合意が得られない。市町村の地域計画を先に読む
- 災害・排水 — 浸水想定区域や土砂災害警戒区域はパネル・架台の損壊リスクだけでなく、周辺農地への影響(設備の流出)で問題になる
- 日照と遮光 — 山影の多い谷地は発電量と下部営農の両方が不利。改正案の遮光率基準も踏まえ、架台設計の前に地形の日陰を見る
- 景観・近隣 — 用地条件ではないが、地元説明が先にできる市町村(基本計画あり)を選ぶことがトラブル予防になる
よくある質問
農地のまま太陽光発電ができるの?
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)なら可能です。農地に簡易な構造の支柱を立て、その支柱部分だけを農地法の「一時転用」許可で扱い、下の農地では営農を続けます。地目も農地のまま残ります。一方、営農をやめて区画全体にパネルを敷く「野立て」は通常の農地転用(恒久転用)で、農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地では原則として許可されません。
営農型太陽光発電の許可は必要ですか?
必要です。支柱部分について農地法第4条または第5条の一時転用許可(許可権者は都道府県知事または指定市町村長)を受けます。設置者と営農者が別の場合は、下部農地の空中に区分地上権等を設定するための農地法第3条許可も同時に必要です。農用地区域内でも一時転用許可を受ければ農振法の開発許可は改めて不要とされています(農林水産省Q&A問32)。電気事業法や再エネ特措法(FIT/FIP)の手続きは別途あります。
一種農地で太陽光パネルを設置できますか?
営農型(一時転用)であれば、農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地でも申請できますが、その場合の許可期間は原則3年以内で、担い手が営農する場合や遊休農地を再生利用する場合に限り10年以内になります。営農を伴わない野立ての太陽光は第1種農地では原則不許可で、農山漁村再エネ法を使って再生利用が困難な荒廃農地等に設置する例外があるのみです。
一時転用許可の期間は何年ですか?
原則3年以内で、再許可できます。(1)認定農業者等の担い手が自ら所有または利用権を持つ農地で営農する場合、(2)遊休農地を再生利用する場合、(3)第2種農地または第3種農地を利用する場合は10年以内です(2024年4月施行のガイドライン別表)。再許可時は、それまでの期間の営農状況(地域の平均的な単収と比べておおむね2割以上減っていないか等)が審査されます。
ジオ農地で転用できるかどうかが分かりますか?
分かりません。当サイトの再エネ用プリセットは、農振/農用地区域・都市計画・傾斜・災害・接道・日照・まとまり・利用状況の8条件を公的オープンデータで「一致/要確認/不一致/データなし」に並べる机上スクリーニングで、転用の可否・農地区分(甲種/第1〜3種)・許可の見込みは判定しません。農地区分と可否の確認先は農業委員会です。
参考(一次資料、2026年8月23日閲覧): 農林水産省「営農型太陽光発電について」、 同「営農型太陽光発電について(令和8年1月)」(件数・面積・栽培作物・支障割合)、 同「再生可能エネルギー発電設備を設置するための農地転用許可」、 同「営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドライン」(令和6年3月25日5農振第2825号、令和7年3月31日改正)、 同「営農型太陽光発電の実務用Q&A(発電事業者向け)」(令和8年3月改訂版)、 同「農地転用許可制度について」、 同「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」、 同「基本計画作成の取組状況について」、 e-Govパブリック・コメント「農地法施行規則及び農山漁村再生可能エネルギー法施行規則の一部を改正する省令案」ほか2件(2026年7月24日〜8月22日)。 当サイトの判定に用いるデータの出典: 筆ポリゴン(農林水産省)、国土数値情報(国土交通省)、地理院標高タイル(国土地理院)、Sentinel-2(Copernicus)。 本データは公的オープンデータを基にした参考情報であり、実際の筆界・権利関係・最新状況を示すものではありません。
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の手続きは必ず市町村の農業委員会等の窓口でご確認ください。