農地の青地・白地の調べ方 — 農用地区域かどうかを4つの手段で確認する
最終更新: 2026-08-23
農地を借りる・買う・転用する・営農型太陽光の用地にする——どの目的でも、候補地を見つけたあと最初に確かめるべきことは 「その農地が青地(農用地区域)か、白地か」です。ここを飛ばして話を進めると、 転用の段取りが根本から変わったり、そもそも計画が成立しなかったりします。 この記事では、用語の意味と影響を押さえたうえで、調べる手段を4つ、正確さと手間の軸で比較します。 最後に、青地だった場合に出てくる「農振除外」が実際どのくらい現実的なのかも整理します。
青地・白地とは — 農業振興地域と農用地区域の関係
青地・白地はどちらも法令用語ではなく、市町村の農振図で農用地区域が青く塗られていることに由来する通称です。 制度の階層は次の3段です(農業振興地域の整備に関する法律=農振法)。
- 農業振興地域 — 都道府県知事が指定する、総合的に農業の振興を図る地域。令和6年12月末時点で全国1,718市町村のうち1,601市町村が指定を受けています(農林水産省)
- 農用地区域(青地) — 農業振興地域の中で、市町村が農業振興地域整備計画(農用地利用計画)により「農業上の利用を確保すべき土地」として定めた区域。10ha以上の集団的な農地、土地改良事業の対象地、地域計画の達成に必要な土地などが含まれます。全国で462万ha(農地計401万ha)が該当し、日本の農地の大半がここに入ります
- 白地 — 農業振興地域内だが農用地区域に含まれない農地。一般にこれを白地と呼びます(農業振興地域の外にある農地を白地と呼ぶ人もいるので、会話では「農振内の白地」「農振外」と言い分けると誤解が減ります)
なぜ重要か — 転用・営農型太陽光・売買への影響
- 転用 — 農用地区域内の農地は、農用地利用計画で指定された用途以外に使うことが認められず、 農地転用許可制度の立地基準でも「農用地区域内農地」は原則として許可されません。 転用するには先に農用地区域からの除外(農振除外)が必要で、そのうえで農地法4条・5条の許可が要ります。 白地は農地区分(甲種・第1種〜第3種)に応じて個別に判断されます
- 営農型太陽光(ソーラーシェアリング) — 支柱部分の一時転用という枠組みのため、農用地区域内でも設置できる場合があります。 ただし要件・期間・下部の営農条件は通常の転用と大きく異なり、青地か白地かで事業の組み立てが変わります。 詳しくは営農型太陽光の用地要件にまとめます
- 売買・賃借 — 農地のまま売る・貸すのであれば、青地でも農振除外は不要です(農地法3条許可や農地バンク経由の利用権設定)。 逆に「宅地や資材置場として売りたい」「住宅用地として買いたい」場合は、青地なら除外が先行するので、 買い手の範囲と価格の前提が変わります(農地を売りたいときの4つの出口)
調べ方4つ — 正確さ・手間・費用で比べる
| 手段 | 正確さ | 手間 | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|
| 1. 市町村の農政担当課に問い合わせる(農業委員会経由でも可) | 確定。計画の所管課そのもの | 地番が必要。電話・窓口・自治体により照会票 | 無料(証明書発行は有料の自治体あり) | 候補が1〜数筆に絞れていて、除外の要否まで聞きたいとき |
| 2. 農振図(農用地利用計画図)を閲覧する | 確定。ただし図面の読み取りは自分で | 窓口で閲覧。Web公開している自治体は自宅で可 | 無料(複写は有料) | 地番が分からず「この辺り一帯」の区域境を見たいとき |
| 3. 地図データで当たりを付ける(ジオ農地のスコアカード、国土数値情報A12) | 参考。年次が古く除外・編入が未反映 | 最小。ブラウザで区画をクリックするだけ | 無料 | 複数市町村の候補を一括で絞り込み、照会先リストを作るとき |
| 4. eMAFF農地ナビで確認する(農地台帳の公表事項) | 高い。農業委員会の台帳に基づく農振法区分 | 小。地図で筆を選ぶ。筆の位置を知っている必要あり | 無料 | 特定の筆について、台帳上の区分・遊休農地かを公式情報で確認するとき |
実務では3 → 4 → 1の順がいちばん手戻りが少ないです。机上で候補を絞り、公式情報で筆ごとに確かめ、 最後に所管課へ除外の要否まで含めて聞く。1から始めると、候補ごとに照会が発生して時間がかかります。
手段1・2: 市町村の農政担当課と農振図
農用地区域を定めているのは市町村(農業振興地域整備計画)なので、最終的な答えは市町村にしかありません。 担当課の名称は「農政課」「農林課」「農業振興課」など自治体で異なり、農業委員会事務局が窓口を兼ねていることもあります。 問い合わせには地番(登記上の所在・地番)が要ります。不動産登記事項や固定資産税の課税明細で確認できます。
農振図(農用地利用計画図)は窓口で閲覧でき、Web上の地図サービスで公開している自治体も増えています。 区域の境界線が筆の途中を横切ることもあるため、境目の農地は図面だけで判断せず担当課に確認してください。 計画はおおむね5年ごとの基礎調査で見直されるほか、随時の変更(除外・編入)もあるので、 古い図面のコピーで判断しないことも重要です。
手段3・4: ジオ農地で当たりを付け、eMAFF農地ナビで公式確認する
ジオ農地のスコアカード(机上の一次スクリーニング)
ジオ農地では、国土数値情報「農業地域データ(A12)」の農用地区域ポリゴンを筆ポリゴンに重ね、 区画ごとに「農用地区域(青地)の可能性」を参考表示しています。手順は次のとおりです。
- 農地を探すで都道府県・市町村を選ぶ
- 地図上の区画をクリックしてスコアカードを開く
- 「基本情報」欄の「農用地区域(青地)」行を見る。重なり率が10%以上なら「可能性あり(要確認)」、それ未満なら「重なりなし」。いずれも「◯年時点の計画です。除外・編入は反映されていないため、市町村への確認が必要です」の注記が付きます
- 検索条件の「農振・農用地区域」で「農用地区域(青地)を除く」「青地のみ」「農振地域外のみ」に絞ると、候補リストの段階でふるいにかけられます
精度の前提をはっきり書いておきます。A12は整備年度が2015年度までで、県によって内容年次はさらに古く(例: 千葉県は2009年)、 その後の除外・編入は入っていません。国土数値情報のページ自身が、農用地区域の細区分は 「土地利用基本計画においても参考表示の扱いであり、精度は保証できない」と注記しています。 岡山県はA12の利用条件が非商用のみのため、ジオ農地では表示していません。 したがってこれは机上の当たり付けであり、公式の農振図と農業委員会・農政担当課の回答が常に優先します。 どの県でどのデータが揃っているかはデータ整備状況を参照してください。
eMAFF農地ナビ(農地台帳の公表事項)
農林水産省のeMAFF農地ナビでは、 農業委員会が整備する農地台帳の公表事項として、筆ごとの所在・地番・地目・面積、 農振法の区分(農用地区域内外)、都市計画法の区分、遊休農地の該当、貸借意向などを確認できます。 台帳に基づくため精度は高く、ジオ農地で当たりを付けた区画を同じ場所で開いて確かめる、という使い方が向いています。 ジオ農地のスコアカードからは該当位置のeMAFF農地ナビへ外部リンクで移動できます(当サイトは同サービスのデータを取得・複製していません)。
農振除外の概要と現実性
青地だった場合、転用の前に農用地区域からの除外(市町村の農用地利用計画の変更)が必要です。 農振法13条2項により、次をすべて満たす場合に限って除外できます(農林水産省「農業振興地域制度の概要」)。
- 農用地以外に使うことが必要かつ適当で、農用地区域以外に代替すべき土地がないこと
- 地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがないこと
- 農用地の集団化、農作業の効率化など、土地の農業上の効率的かつ総合的な利用に支障がないこと
- 効率的かつ安定的な農業経営を営む者への農用地の利用集積に支障がないこと
- 土地改良施設(用排水路など)の機能に支障がないこと
- 土地改良事業などの農業生産基盤整備事業の完了後8年を経過していること
手続きは、事業者・所有者が市町村に申し出る → 市町村が計画変更の可否を判断 → 変更案の公告・縦覧(30日)と異議申出期間(15日) → 都道府県知事との協議・同意 → 計画変更、という流れで、そのあとに農地法の転用許可を別途取ります。 市町村によって申出の受付が年1〜数回に限られ、着手から転用許可まで年単位になることも珍しくありません。 また「申し出れば除外される」制度ではなく、上の要件への当てはめと県の同意基準で個別に判断されます。 集団的な優良農地の真ん中にある筆、基盤整備から8年未満の筆は、除外の見込みが立ちにくい典型例です。
だからこそ、候補地を探す段階で農振外または白地の候補を先に並べ、青地は「除外の見込みを市町村に聞く」対象として分けておくのが、 30分の初動調査を短くする最短ルートです。再エネ用地の一次スクリーニングでは、農用地区域(青地)を除く条件を初期値にした 候補地スクリーニングが使えます。
よくある質問
青地と白地の違いは何ですか?
どちらも法令用語ではなく実務上の通称です。青地は農業振興地域内の「農用地区域」に含まれる農地で、市町村の農業振興地域整備計画により農業上の用途に限定され、農地転用は原則としてできません。白地は農業振興地域内だが農用地区域に含まれない農地を指すのが一般的で、転用は農地法の許可(農地区分による立地基準と一般基準)で個別に判断されます。農業振興地域そのものの外にある農地は、青地・白地のどちらでもありません。
自分の農地が青地かどうかは、どこで調べられますか?
確定できるのは、その農地がある市町村の農業振興地域整備計画(農用地利用計画)を所管する農政担当課です。地番を伝えて問い合わせるか、窓口で農振図を閲覧します。eMAFF農地ナビでも農地台帳の公表事項として農振法の区分(農用地区域内外)を確認できます。ジオ農地のスコアカードは国土数値情報(A12)で机上の当たりを付けるもので、年次が古いため最終確認には使えません。
青地の農地は絶対に転用できないのですか?
農用地区域に含まれたままでは転用許可の対象になりません。転用するには、まず市町村に農用地区域からの除外(農振除外)を申し出て、農振法13条2項の要件(代替地がない、地域計画や農地の集団化・利用集積に支障がない、土地改良施設の機能に支障がない、基盤整備事業完了後8年経過など)をすべて満たすと認められ、計画変更の公告・縦覧と都道府県知事の同意を経る必要があります。そのうえで別途、農地法の転用許可が必要です。除外されるかどうかは個別判断で、年単位の時間がかかることがあります。
青地でも農地として売る・貸すことはできますか?
できます。農振除外が必要になるのは農地以外に転用する場合です。農地のまま耕作する人に売る・貸す(農地法3条の許可、または農地バンク経由の利用権設定)場合は、農用地区域内であっても除外は不要です。むしろ農用地区域内の農地は、担い手への集積や各種支援の対象になりやすい面があります。
ジオ農地の「農用地区域(青地)の可能性」はどのくらい信用できますか?
国土数値情報の農業地域データ(A12)に収録された農用地区域ポリゴンと筆ポリゴンの重なりが10%以上のときに「可能性あり(要確認)」と表示しています。A12は整備年度が2015年度までで、県によって内容年次はさらに古く(例: 千葉県は2009年)、その後の除外・編入は反映されていません。また国土数値情報自体が「参考表示の扱いで精度は保証できない」としています。候補を絞る最初の当たり付けには使えますが、市町村の農振図・農政担当課の回答が優先します。
参考(一次資料): 農林水産省「農業振興地域制度の概要」、 農林水産省「農業振興地域及び農業振興地域整備計画の概況」(令和6年12月31日現在)、 農林水産省「農地転用許可制度について」、 農林水産省「農業振興地域制度及び農地転用許可制度」、 愛知県「農用地区域からの除外について」、 国土交通省 国土数値情報「農業地域データ(A12)」、 農林水産省「eMAFF農地ナビ」(いずれも2026年8月23日閲覧)。 ジオ農地の「農用地区域(青地)の可能性」は国土数値情報(国土交通省)農業地域データ(A12)を加工して作成した参考表示で、 農用地区域の内外を確定するものではありません。
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の手続きは必ず市町村の農業委員会等の窓口でご確認ください。