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名古屋市の農地転用 — 区域から見通しを調べる

農地を宅地や駐車場に転用したい、あるいは相続した農地をどうするか決めたい。 そのとき最初に問題になるのは、その農地が どの区域に入っているかです。 同じ名古屋市内でも、転用がほぼ通らない区域と、比較的進めやすい区域があります。

このページでは、愛知県名古屋市の農地12,978区画(約885.4ha)を公的オープンデータから集計し、 転用のしやすさを左右する条件を整理しました。個別の区画は条件検索から確認できます。

12,978農地区画数
約885.4ha総面積
12.5% 農用地区域(青地・2006時点)
20.4% 市街化調整区域

まず確認すべき区域 — 名古屋市の内訳

農地転用の可否は、主に「農業振興地域の指定」と「都市計画区域の区分」で決まります。

農業振興地域(農振)の区分

区分区画数割合転用の見通し
農用地区域内(いわゆる青地) 1,622 12.5% 原則不可。まず農用地区域からの除外(農振除外)が必要で、申出の受付時期が限られるため時間がかかります
農振地域内・農用地区域外(いわゆる白地) 813 6.3% 農地法4条・5条の許可の対象。立地基準・一般基準による個別審査です
農振地域外 10,543 81.2% 農振除外の手続きは不要ですが、農地法の立地基準による審査は別途あります

都市計画区域の区分

  • 市街化調整区域 2,652区画 / 20.4%
  • 市街化区域 10,318区画 / 79.5%
  • 都市計画区域外 8区画 / 0.1%

市街化区域の農地は、農地法上は許可ではなく届出で転用できます(4条・5条の届出)。 名古屋市の農地でこれに該当するのは79.5%です。 市街化調整区域では農地法の許可に加えて、都市計画法の開発許可も検討が必要になります。

もう一つの軸 — 農地法の立地基準(農地区分)

農振と都市計画のほかに、農地法そのものが農地を甲種農地・第1種農地・第2種農地・第3種農地に 区分しており、転用の可否はこの区分にも左右されます。おおまかには、集団的に広がる優良な農地や 土地改良事業を行った農地(甲種・第1種)は原則不許可、市街地に近い農地(第3種)は原則許可、 その中間が第2種です。農振地域の外にあっても第1種農地に当たることはあるため、 「農振地域外だから転用できる」とは限りません。

※ このうち甲種農地は市街化調整区域内にのみある区分です。 農地区分は面積・形状・周辺の状況などから個別に判定されるもので、 全国一律の公開データが存在しないため、このページでは集計していません。 対象の区画がどの区分かは農業委員会にご確認ください。

※ 農振区域の集計は国土数値情報A12(農業地域データ)によるもので、愛知県の内容年次は 2006です(A12は2015年度公開が最後で、以降更新されていません)。 現在の指定と異なる可能性があるため、必ず農業委員会でご確認ください。 都市計画区域は国土数値情報A55(2024年度版)によります。

区別の農地区画数

名古屋市の農地は15区に分かれています。転用の相談・相続の届出先は区ごとではなく、 市の農業委員会が窓口です。

農地区画数
中川区 2,766
港区 2,595
緑区 2,163
守山区 1,472
天白区 1,386
中村区 801
北区 492
西区 475
名東区 454
南区 240
瑞穂区 54
千種区 50
昭和区 22
東区 4
熱田区 4

道路からの距離

農地を宅地や事業用地に転用する場合、建築基準法の接道義務(原則、幅員4m以上の道路に2m以上接すること)を 満たせるかが実務上の分かれ目になります。ただしこの義務が適用されるのは、 都市計画区域・準都市計画区域の中だけです(建築基準法41条の2)。 名古屋市の農地のうち0.1%は 都市計画区域の外にあり、その範囲では接道義務は適用されません。

名古屋市の農地12,978区画のうち、 道路から25m以内が12,689区画( 97.8%) でした。

※ 道路データ(国土数値情報N13)との距離であって、接道の可否を示すものではありません。 N13の位置正確度は水平位置の標準偏差25mで、これより細かい距離は誤差に埋もれます。 建築基準法上の道路種別(指定道路図)の全国データは存在しないため、私道か公道か・幅員・ 間口の広さは個別に確認が必要です。最寄りの車道が100mを超える区画は距離を求めておらず、 25m以内には含めていません。

農地転用の費用は何にかかるのか

「農地転用にいくらかかるか」は、次の3つに分けて考えると整理できます。

  1. 許可申請そのものの手数料 — 農地法4条・5条の許可申請に、法定の申請手数料はかかりません
  2. 登記にかかる法定費用と書類の実費 — 所有権移転登記の登録免許税、登記事項証明書・公図・住民票などの取得費用。 転用の許可申請に手数料がかからないだけで、登記の段階では法定費用が発生します
  3. 専門家に依頼する場合の報酬 — 行政書士(転用許可申請)、土地家屋調査士(地目変更登記)、司法書士(所有権移転登記)など

つまり「転用費用」として語られる金額の大半は3の報酬と、転用後の造成・工事費です。 市街化区域の届出案件と、市街化調整区域の許可案件では手間がまったく違うため、 見積もりを取る前に対象の区画がどちらなのかを確認しておくと話が早くなります。

※ 報酬額は事務所ごとに異なるため、当サイトでは相場の金額を示していません。

相続した農地の手続き

農地の相続では、通常の不動産と異なり2つの手続きが必要です。

  1. 法務局での相続登記 — 2024年4月から義務化。取得を知った日から3年以内
  2. 農業委員会への届出(農地法3条の3) — 取得を知った日から10か月以内

相続による取得には農地法3条の許可は不要で、農業をしない相続人でも農地を相続できます。 ただし相続後に売却・転用する場合は、上で見た農振・都市計画の条件がそのまま効いてきます。 青地かつ市街化調整区域の農地では買い手が農業者にほぼ限られるため、 早い段階で農地バンクへの相談を選択肢に入れておくと選べる幅が広がります。 → 農地法3条許可とは

相続するかどうか自体を迷っている場合や、手放す方法(国に引き取ってもらう 相続土地国庫帰属制度を含む)を比べたい場合は、次の2つのガイドにまとめています。 → 農業をしない人の農地相続 — 6つの選択肢と期限 / → 相続土地国庫帰属制度は農地で使えるか

売ること自体を決めている場合は、農地のまま売る・転用して売る・農地バンク・国庫帰属の 4つの出口を比較したガイドがあります。青地や無道路など、買い手が付きにくくなる条件も 整理しています。 → 農地を売りたい — 4つの売り方と、売りにくい農地の見分け方

使われていない可能性のある農地(衛星推定)ベータ

相続した農地が現在どうなっているかは、現地に行かないと分かりません。参考として、 Sentinel-2衛星データから耕作パターンを推定した結果を掲載します(2026-07時点)。

  • 非耕作の可能性(高) 168 区画
  • 非耕作の可能性(中) 197 区画
  • 耕作パターンあり 2,199 区画
  • 判定不能(データ不足) 9,149 区画

判定できた3,829区画のうち、 約9.5%が非耕作の可能性(中・高)と推定されました。 → 該当する区画を見る

当サイトが独自に推定した参考情報です。農地法にもとづく遊休農地の判定とは別のもので、 現地確認の優先順位づけを目的としています。 → 推定方法について

災害想定区域との重なり

  • 洪水浸水想定区域(想定最大規模) 7,480 区画(57.6%)
  • 土砂災害警戒区域 25 区画(0.2%)

※ 区域との重なり10%以上の区画を集計した参考情報です。転用後の用途によっては、 浸水想定区域であることが開発許可の審査や融資の条件に影響することがあります。 0区画・0%は「公表されている想定区域と重なる区画が無い」という意味で、 区域が指定されていない場合や元データが未収録の場合も0になります。 最新・正式な情報は必ず市町村のハザードマップで確認してください。

相談先

※ 農業委員会の個別の連絡先は全国統一の一次情報が存在しないため、 全国農業会議所の公表ページへのリンクのみとしています。 農地中間管理機構の情報の出典は「農地中間管理機構一覧」(農林水産省)です。

名古屋市の農地を売る・貸す・手放すには

転用が難しい区域の農地でも、出口が無いわけではありません。 名古屋市の農地の売り方・手放し方は大きく4つ — 農地のまま農業者に売る(農地法3条)、 農地バンクに預ける、転用して売る(4条・5条)、相続した農地なら国に引き取ってもらう (相続土地国庫帰属制度)。どれが現実的かは、上の区域(農用地区域か・市街化区域か)と接道でほぼ決まります。

  • 農用地区域(青地)の農地(12.5%)は、農地のまま売る・貸すなら農振除外は不要です。 転用して売る場合だけ除外が先行し、年単位かかることがあります。
  • 市街化調整区域の農地(20.4%)は転用して売る出口が許可制で時間がかかるため、 農地のまま売る・貸す出口の方が早いことがあります。
  • 価格の公的な相場データはありません(地価公示に田・畑の標準地が無いため)。地域の実勢は名古屋市の農業委員会が把握しています。

農地の出口チェック(無料・5問)で、自分の条件に合う出口を整理する → 農地を売りたい — 4つの売り方と、売りにくい農地の見分け方

複数の農地をまとめて調べる

複数の農地の地番リストをお持ちの場合は、 地番一括検索(β・無料)で 区画の一括特定と初期スクリーニング(一致度・面積・都市計画区域・農用地区域の可能性)ができます。

※ 公開データによる参考資料です。転用可否・農地区分の判定は行いません。

よくある質問

名古屋市の農地は転用できますか?

区画によります。名古屋市の農地では農用地区域(青地)が12.5%(2006時点のA12による推計)、市街化調整区域が20.4%を占めます。まず対象の区画がどの区域に入っているかを確認し、農業委員会にご相談ください。

農地を相続したら、いつまでに何をすればいいですか?

法務局への相続登記(2024年4月から義務化。取得を知った日から3年以内)と、農業委員会への届出(農地法3条の3。取得を知った日から10か月以内)の2つが必要です。届出に許可は不要です。

農業をしない相続人でも農地を相続できますか?

できます。相続による取得は農地法3条の許可が不要で、農業委員会への届出のみで済みます。ただし相続後に売却・転用する場合は、別途手続きが必要です。

農地だけを相続放棄できますか?

できません。相続放棄は遺産全体に対して行う手続きで、農地だけを選ぶことはできません。農地だけを手放したい場合は、相続土地国庫帰属制度(2023年4月開始。農地も対象)や、農地バンク・農業委員会へのあっせん相談が選択肢になります。

青地(農用地区域)の農地は転用できませんか?

原則としてできません。農用地区域からの除外(農振除外)の手続きを経る必要があり、申出の受付時期が限られるため時間がかかります。

出典: 筆ポリゴン(農林水産省統計部)、国土数値情報(国土交通省。A12農業地域データ、A55都市計画決定GISデータ、道路データ) 、Sentinel-2衛星データ(当サイトによる推定) 、「農地中間管理機構一覧」(農林水産省)